鬼の夏休み8

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「大いなる、に、東京でのロケから何人か入ることになっているが、みんなど素人に毛が生えたようなもんだ。俺が不在の時はお前がまとめることになる。特に斎藤さん押しのタレントの二村、きっちり見ておけ」
「あ、はい」
 どうやら長年の付き合いのあるスポンサーの美聖堂社長斎藤が推薦してきた俳優なので、使わないわけにはいかないようだ。
 無論、駆け出しの技量すらわからない俳優など、工藤としては使いたくはないと苦々し気な顔に書いてある。
 本谷のことも工藤は最初クソミソに言っていたが、彼は人気に違わずうまくステップアップできたわけで、今は徐々に力をつけてきたことを工藤も認めているようだ。
 工藤は関越に乗ると一気に軽井沢まで車を走らせた。
 良太がドラマ「田園」の撮影のことや宇都宮や竹野、山内ひとみなど俳優陣の話をあれやこれやと話しているうちに、たまにぼそっと聞き返すくらいだったが、乃木坂を出た頃の機嫌の悪さも多少は緩和されてきたらしい。
「カンパネッラによってメシを食って行くか。まだ開いているだろう」
「そういえば、腹減った~」
 空腹を思い出した良太に、工藤はフンっとまた笑った。
 カンパネッラは軽井沢に行くと時間があれば大抵一度は訪れるイタリアンレストランだ。
 和食党の工藤にしては珍しく、気に入っているらしい店である。
 オーナーシェフの吉川は、工藤とというより、軽井沢の別荘に住み込んで管理している平造と仲がいい。
 ちょっとした自前の菜園で、平造はトマトや白菜、キャベツなどの一般的な野菜以外に、フェンネル、ラディッキョ、バンビーノなどのイタリア野菜を作っていて、吉川とは野菜の話になるとつきないらしい。
 以前、平造がぎっくり腰で入院した際も、良太が行くまで平造についていてくれた。
 仲がいいと言っても同年配というわけでもなく、高校の頃はやんちゃをしていて、平造によく怒鳴られたらしいが、ある時心機一転、イタリアで数年料理の修行をし、地元に戻ってレストランを開業したという、まだ三十代の青年だ。
「いらっしゃい、工藤さん、良太くん」
 ドアを開けると、ちょうど吉川が傍に立っていて、にこやかに二人を招き入れた。


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