鬼の夏休み58

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 実際、紫紀の紹介でなければとっくにバックレていたはずだが、本音を言えば自分の方が良太より子供っぽいマネをしそうになっていた。
 勝手気ままな若手タレントの風邪のお陰でスケジュールに見事穴が開き、マネージャーを怒鳴りつけたものの、お陰で、誰にも邪魔されないだろう二日間がぽっかり空いたのだ。
 一応、紫紀に誘われていたのを理由にここ軽井沢に来てみれば、杉田さんには相変わらずぼっちゃん呼ばわりされ、あげくにバースデイケーキと来たものだ。
 紹介してくれた紫紀には悪いが、本当に浜村たちとの話は退屈だった。
 これがまたスポンサー契約を結ぶということにでもなれば、また話は別だが、いずれにせよ、工藤を値踏みしていたあの渡良瀬という男はあまり好きになれない。
 どうせ極道などとまともに取引なんかできるか、とでも考えていたのだろうとは容易に推察できる。
 いつもそっちで勝手に決めればいい、というスタンスでいるのだが、これが藤田や美聖堂の斎藤には何故か気にいられて、これまで長い付き合いになったりしているのだから不思議だ。
 紫紀の場合は千雪や京助との関係から知り合ったのだが、あたりが柔らかいが切れ者で工藤にしては珍しく何となくウマが合った。
 得体の知れないところもあるが、京助とは性格が真逆に見えてその実、竹を割ったような正義感の持ち主だというところが、工藤にとっては偽りのない付き合いでいたいと思わせる相手だ。
「ああ、工藤さん、良太ちゃん、よかった。ようやくパーティの方はお開きになりました」
 そこへ当の紫紀が現れた。
「しかし、公一くんから聞いたよ。またえらいことを裏でこそこそやってたんだね、千雪くん」
「パーティの邪魔にならんよう、何とか。せえけど、あのお客さんにはちょと待たせてしもたし、なんぞお詫びでもせなあきませんね」
 タブレットから顔を上げて千雪は言った。
「こちらで手配しておくよ。それで京助はまだ警察?」
「みたいですね。結構何台もひとところに盗んだ車隠しとったみたいやし、女の子にパパ活やらせたり、他にも叩けばほこりが舞う輩やないですか?」
 千雪が軽く答えた。

 


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