鬼の夏休み59

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「パパ活? なるほど。まあ公一くんがえらく責任感じてるみたいだが、彼の与り知らないところで起きたんだからね」
「公一さんの後輩のダチの知り合いとか、いうてました」
「ふーん、ま、面接のときにわかれば苦労はしないよな。何かあった時に対応するっきゃない」
 紫紀は感慨深げに頷いた。
 工藤と良太はコーヒーを飲み終えたところで、綾小路を後にした。
「紫紀さんって、なんかほんと懐が大きいっていうか、京助さんとは全然ちがいますよね」
 良太が言うのに、工藤は鼻で笑う。
「そういえば、渡良瀬さん、河崎さんとか佐々木さんのことえらく買ってましたよね? でも佐々木さん、ほんと、仕事量マックスだから、何か頼まれても大変ですよね」
「ああ、まあ、何かあっても来年以降の話だろう」
「ですよね。でもやっぱ、佐々木さんも凄い人なんだって、思いましたよ」
「芸術畑の人間は、自分の容量顧みないで突っ走るから、誰かがコントロールしてやらないと倒れることになりかねない」
 良太は工藤の意見に、おっ、と思う。
 工藤が佐々木さんに対しては甘いのは、そういう理由からなのか。
「そこはまあ、直ちゃんがタズナを握ってるみたいだから」
「ほう?」
 工藤は苦笑し、車の外に目をやった。
 道の両側には樹々が鬱蒼と茂っている。
 子供の頃、こちらに遊びに来てこのあたりまでひとりでよく歩いた。
 綾小路だけでなく、塀に囲まれて誰がいるのかわからないような大きな別荘もよくあった。
 杉田のおしゃべりのせいか、ふと曾祖父母のことが思い出された。
 曾祖父は頑健な男だったが、滅多なことでは怒ったりしなかった。
 かといって工藤のことを放りっぱなしでもなく、学校の話などよく聞いてきた。
 曾祖母は品のいい優しい人だったが、極端に工藤をかまうということもなかった。
 だが、当時は嫌われていると思っていたのだが、今思うと、それなりに愛されていたのだろうと感じることがある。
 極道の妻になった祖母でさえ、平造を曾祖母に引き合わせ、必死で工藤のことを頼み込んでいた。
 工藤の母親である娘を自ら引き離したことも、愛するが故だったのだろうと。
 今ならわかる気がする。
 フン、おそらく、良太を知らなければ、心に余裕を持てずmそんなこともわからなかったかもしれない。
 部屋に上がるなり良太を引き寄せた。
 小谷や理香や、何やら無駄に俺をイラつかせやがって。
 食らいつくような工藤のキスに、良太は息をするのも苦し気にそれでも工藤の首に腕を回して応えようとする。

 


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