Summer Break23

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 今日はたまに晴れ間があるが曇り空なので、平造も一日畑にいるつもりらしい。
 確かに良太や工藤、それに猫も一式外に出ている今が、リノベするいい機会なのだろう。
「う、でも、あれ、多佳子さんに預かったシロモノ、大丈夫かな」
 はっと思い出したのは、工藤の祖母多佳子から預かっている、工藤の母親の写真入りロケットを引き出しの奥にしまっていたことだ。
 何せ、良太が預かることになってしまったものの、千雪経由で鑑定してもらったところ、ロケットを飾る宝石類が何百万とかのシロモノだというのだ。
「良太がそんなもの持っとるとか、誰もわかれへんねんから、普通に引き出しに入れといたらええんや」
 なんて軽く千雪は言うのだが、そんなシロモノを自分が持っていること自体、落ち着かないのだ。
「せっかく忘れてたのに!」
 そう、いつもはその存在を思い出さないようにしていたのだが、部屋に人が入るとなると俄かに心配になる。
「やっぱ、財産なんてない方がラクだよな」
 会社関係だけでなく、昔横浜にあった工藤の屋敷にも出入りしていた昔からの付き合いの工務店というのだから、何も心配することもないとは思うのだが。
 夕方、工藤が良太を連れて行ったのは、『佐久』というこのあたりでは老舗の鰻屋だった。
 平造も誘ったのだが、疲れているし夜は外に出る気がしないというので、平造には出前で届けてもらった。
 座敷を予約してあったので、刺身や小鉢、椀物などが並ぶ鰻膳を前に二人は冷酒で盃を合わせた。
「まあ、いろいろ、忙しくさせたな」
 珍しく工藤から労いの言葉をかけられて、「花火もみんな楽しんでくれたみたいだし、よかったです」と良太も素直に答えた。
「天気もよかったし」
 明日も晴れるようだが、雷雨に気をつけろという予報が出ている。
「ここんとこ夏の雨といえば夕立どころか、昨日の夕方は東京、ゲリラ豪雨で道路が川のようだったって、さっきモリーが電話で言ってましたよ」
「異常気象ももとはといえば人間の仕業だ」
 工藤はぼそりと言う。
「そうですよね。もうずっと南極の氷が解け始めてるとか気温が上がってるとか言ってるのに、人間が具体的に動いてないから。シロクマとかペンギンとか、ほんと何とかしないと」
 良太は思わず強い口調で言った。
 レッドデータアニマルズというドキュメンタリーに携わり、以前からシロクマやペンギンの情報を見るにつけ憤懣やるかたない思いでいた良太は、もっとたくさんの動物が人間の犠牲になっているのだと考えを新たにした。
 レッドデータアニマルズの第二弾プロジェクトも動き始めてはいるのだが、何せ調査をしデータを集めて幾度もミーティングを重ね、ようやくターゲットの動物をリストアップし、それから一つ一つ撮影計画に沿ってはじめて撮影隊が動くわけだから、いずれにせよ長期戦だ。
 酒のせいで、良太の口はいつも以上に滑らかになり、そんな話をし始めるとつい熱が入ってしまう。
 


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