月鏡13

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「や、だなあ、千雪さん、何も企んだりしてませんよ」
「そうか? 何か怪しいで」
 推理作家で、青山プロダクションでもその原作を映画やドラマ化している小林千雪はふわあとひとつあくびをした。
 髪は茫々、黒縁眼鏡の著者近影の写真でミステリーファンはずっと騙されてきたが、実際は類まれな美貌の持ち主であることは、このパーティ会場にいる面々くらいにしか知られていない。
 この人の目は決して侮れないし、下手なウソは通用しない。
 名探偵などと呼び称せられているのは伊達ではないから、気を付けるに越したことはない。
 千雪に知られて困るというわけではないが、沢村の件は佐々木という微妙なニュアンスを含んでいるのだ。
「お疲れのようですね」
「まあな、学会の教授の論文のてったいで、徹夜や」
 千雪の後ろの暗がりからまさしく背後霊のように千雪の相方の綾小路京助も現れるし、元青山プロ所属だった女優の小野万里子やその夫で青山プロの嘱託カメラマン井上も顔を見せていた。
 下柳を担ぎ出したのはどうやらひとみらしい。
 藤堂と酒談義を交わしてご機嫌だ。
 何より、窓辺に立つ沢村と佐々木を見て、二人が何とか会えただけでも良かったと胸を撫で下ろす。
 沢村は佐々木はきっとそのうち関係を解消しようと思っているんだとか何とか泣きついてくるが、二人を見ると、佐々木はやはり沢村のことをかなり好きに違いないと良太は思うのだ。
 だって今の佐々木さん、お前しか目に入ってないぞ。
 ほんと、このままこの二人をそっとしておいてやりたい。
 と、良太のポケットで携帯が鳴った。
 相手は小田事務所のパラリーガルで、沢村の身辺を嗅ぎまわっているというその調査をしている遠野だった。
「あ、遠野さん? お疲れ様です」
「わかりました。沢村さんの身辺嗅ぎまわっているやつ。今、画像送ります」
 遠野の話だと、沢村の父親のお抱え弁護士事務所が雇ってる興信所の調査員で、元警官の五十がらみの男だという。
「今、遠野さんから連絡があって、やっぱいたそうです、沢村を張っているらしき人物が」
 遠野の電話を切るなり、良太は藤堂と秋山のところに行って報告した。
「良太ちゃん、顔が怖いよ」
 茶化しながらも藤堂は良太の携帯の画像を見た。
「自分の子供を興信所とかに探らせるような親って、マジ腹立つ!」

 


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