月鏡14

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「良太は幸せな家庭に育ったんだな」
 グラスにワインを注ぎながら、ホテルスタッフそのもののような秋山が苦笑いする。
「なるほど、そうすると、プランB決行だな」
 藤堂が難しい顔で言った。
「え? ちなみにプランAは?」
「時間になったらここを引き上げて、みんなでラウンジで仕切り直し」
 つまり、当初の計画通りということか。
 脱力した良太は、腕時計を見た。
 そろそろお開きの時間だ。
 やがて本物のホテルマンとケータリングサービスを頼んでいたレストランのギャルソン数人がやってきて、てきぱきと片付け、プランBを実行するべく藤堂の扇動でみんなはバーラウンジへと向かった。
 ただし、沢村と佐々木だけを残して。
 アスカの提案では、コスプレを利用して藤堂とアスカが沢村の振りをして階下にある沢村の部屋に行くことになっている。
 無論目的は、沢村の身辺を張っている男をミスリードするためだ。
 さらに、堂々とロビーでアスカが沢村と一緒にホテルに入っていくのを見せつけたのも、その策略の一端だ。
 スポーツ紙へのタレコミも前もって藤堂が人を使ってやらせたことで、案の定、しっかり写真は撮られたようだ。
「明日の新聞に大々的に取り上げてくれるといいんだけどね」
「まあ、リーグ優勝した関西タイガースの立役者ですし、CMでもかなりまた顔を売りましたからね、ゴシップネタとしては扱いは大きいんじゃないですか」
 バーラウンジの隅でこそこそ良太と藤堂は話していた。
「すみません、藤堂さんに、おかしな役お願いしてしまって」
「いや、何の、ちょっとだけ重ね着でもしないと、現役アスリートの身体にはおっつけないけどね」
 良太は苦笑した。
「身長の差はちょっとアスカさんに寄っかかるようにして部屋に行くしかないな」
 藤堂も一般男性としては一八五センチと高身長なのだが、沢村は一九〇ちょっとある。
「いや、すみません、今のメンツの中では藤堂さんが沢村に一番近い感じなんで」

 


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