月鏡17

back  next  top  Novels


 だが、最近良太のことを知ったというから少し違うかもしれない。
 いったい………?!
 どうやらすぐには通してくれないらしいと悟った良太は、いわれた通り、魔女の向かいに腰を降ろした。
 魔女の一言で、三人のうちの一人が奥からコーヒーを入れてトレーに持ってくると、テーブルの良太と魔女の前にカップを置いた。
「あなたのことはちょっと調べさせてもらったわ。いろいろ活躍しているみたいね。家のことでは大変な思いもしたみたいだけど、頑張り屋さんなのね。ご両親は熱海にいらして、妹さんは静岡で教員をされている」
 唐突に家族の話をされた良太は、魔女を睨み付けた。
 家族にまで危害を及ぼそうってつもりか?
 冗談じゃないぞ!
「俺の家族があなたに何の関係があるんです?」
「そんな怖い顔しないでよ。せっかく可愛いのに、台無しじゃない」
「あなたはどなたですってお聞きしましたよね?」
 良太は冷ややかに尋ねた。
「いえね、最近、ネットで高広のことが色々流れてたから、気になったのよ」
 良太は眉を顰めた。
 タカヒロ????
 って、工藤?
「私は中山富貴子。あんまり表舞台には出てこないんだけど、ちょっとね、お芝居を見た帰りなのよ」
 中山、富貴子。
 良太は心の中で反芻した。
 夏には千雪から工藤家のお嬢さんの話を聞いたし、先月は波多野から富貴子の名前を聞いたのを思い出した。
「何しろ駆け落ちまでして組長と一緒になった人ですからね。豪胆で度胸のすわった富貴子さんは旦那の組長を鼓舞させることで組を仕切らせた。平造さんを組長の身代わりにさせたのも富貴子さんらしい。今尚八十を超えて矍鑠と組長の背後に陣取っています」
 波多野はそんなことを言っていた。
「って、あなたが、工藤さんをマル暴が目の敵にしている元凶ですか」
 それを聞くと、「何だと……」と聞き捨てならぬとばかりに背後の二人が思わず動こうとした。
「お前たち、下がっておいで」
 すかさず魔女富貴子が二人に指示した。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村