月鏡21

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 俺は絶対、金輪際、魔女なんかに負けるもんか!
 工藤から絶対離れたりなんかするもんか!
 拳を握ると、今度は思わず涙が零れ落ちる。
 緊張が解けたのと、工藤と離れたりしないという思いが相まって瞼が熱くなったのだ。
 エレベーターが止まったので、慌てて手の甲で目を擦り、気合を入れてロビーに降り、エントランスへと向かうエレベーターへとロビーを横切った。
 車寄せでタクシーを待っていると、すっとタクシーが良太の前で止まる。
「乃木坂までお願いします」
 車に乗り込んだ良太は、つい、ホテルの方を振り返った。
 別に誰も追ってきたりはしていないようだ。
 だが、もしかまたあいつらに捕まったらどうしたらいいんだろう。
 工藤に話すべきだろうか。
 だけど、話したりして、もしか工藤があの魔女オバサンのところに乗り込んだりしたら。
 いや、別に、工藤にとって俺なんかそんなことをするほどの存在じゃないとは思うけどさ。
 また魔女おばさんに近づいてこられても困るし。
 くっそ、どうしよ……………。
「また何か言ってきたとしても、今後一切あの人には近づかないようにしてください。」
 頭の中でグダグダ考えていた良太は、運転手が言った言葉を理解するまで少々時間がかかった。
「は…………?」
「あの人もそうそう近寄ったりしないとは思いますが、一応こちらからも手を回して、釘を刺しておきます」
 その声には聞き覚えがあった。
「あんた、まさか、波多野………」
 バックミラーに映る波多野の目が鋭く見つめている。
「あの人がまさかあなたに近づくとは焦りました。しかも影武者でアリバイまで作って」
 まさしく忍者かスパイのような神出鬼没な男の話に、良太はやっと少し落ち着きを取り戻した。
「そうだよ、何で俺に近づいてきたりしたんだよ、あの魔女オバサン! ちゃんと言っとけよな、工藤との関りがちょっとでもあるとか既成事実作ったら、警察が鵜の目鷹の目なんだし」
「残念ながら、私はあの魔女オバサンとは仲良しこよししていません。私は先代の命を受けているだけですから、魔女オバサンは私の存在は知らないはずです」
 いつものように淡々と波多野は語る。
「とにかく、もう二度と近づくことはないようにします」

 


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