月鏡27

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「怖い目にあわせたな……」
 工藤の言葉が良太の胸にしみる。
 まあ、そりゃ、怖くないわけ、ない……。
「タンカ切って部屋出た帰り……エレベーターン中で膝が笑ってやんの……」
 ボソリと良太が白状すると、工藤はまた良太を抱きしめた。
 良太は工藤の背中に回した腕に力を入れる。
 工藤の腕の中で少しずつ、知らず緊張していた心がほぐれていく。
 この腕の中なら安堵できる。
 工藤が中にいることで身体を繋げていることで、良太の全てが安らいでいく。
「……あ…もっと…もっと! あんたを……感じたい………!」
 もっと深く繋がっていたい!
 喘ぎ、縋る良太を工藤はしっかと抱きしめる。
 怒りと憤りと情けなさと良太への愛おしさが一緒くたになって情動を掻き立てる。
 ひどく昂った己の熱が良太の中で暴れるのを抑えられない。
 良太の内が蕩けて絡みつき、さらに工藤を煽る。
「…あ……んん……工藤………!!」
 荒々しく揺すりあげられて良太の唇から艶めいた喘ぎが漏れ続ける。
 幾度目かいきついた良太は悲鳴のように言葉にならない声を上げて意識を手離した。
 さすがに肩で息をしながら、愛おし気に唇を啄むと、工藤は良太の頬を撫でる。
 過去の呪縛から逃れたはずだった。
 これほどまでに自分の血を呪ったことはない。
 憤怒と熱がまだ冷めやらない。
 できるものなら今すぐにでも乗り込んで、組なんかぶっ潰してやりたい。
 だがここで工藤が動けば、工藤を信頼して仕事をしてくれている全てを裏切ることになる。
 何より良太を、一番守りたいものを裏切ることなど決してできない。
「クソッ!」
 工藤はどこにも持って生きようのない憤りを拳の中に燻らせる。
 波多野の話では警察内部には暴力団同士をぶつからせて双方を潰そうというものがいるという。
 どうせならそれで潰してしまえばいいんだ。
 だが、組長である伯父は祭り上げられてその椅子に座っているだけだ。
 伯父も工藤の母親のさぎりも生まれた家の犠牲になったようなものだ。
 自分がやらなければ関わり合っているものの均衡が危うくなると、その地位を何とか維持しているというところらしい。
 波多野によれば。

 


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