月鏡29

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 くっそ、あの魔女オバサンのせいだ。
「そうだ、千雪さんに聞いてみないと」
 あの魔女オバサンが良太の行動まで把握していたということは、盗聴器でも仕掛けられている可能性があるのではないかという疑惑は大きくなる。
「まさかこの部屋とかも?」
 そうすると昨夜の二人の会話もそのあとのアレも聞かれてるってことになるじゃん!
 冗談じゃないぞ!
 良太はベッドを這い出して、自分の部屋に戻ると、まず千雪に連絡をいれてみた。
 千雪はかなり事情がわかっているし、無論誰かに話すようなこともない。
 波多野の名前は言っていないが、その存在も知っている。
 できる限り事情を話して、協力を仰ぎたい。
「携帯、電源切ってないよな……」
 時々、電話に出たくない時、千雪はよく電源を切っているのだ。
「……なんや……はようから………」
 起き抜けという声が携帯の向こうから聞こえてきた。
「おはようございます。実は折り入ってご相談が」
 するとあくびをする様子がうかがわれた。
「やっぱ何ぞ企んどったな?」
「ちょっとそれとは別件なんですが」
「こんなはように電話してきたってことは緊急? やったら九時には一応研究室に行くし」
「じゃ、九時に研究室に伺います」
「え? まあ、ええけど………」
 良太は携帯を切ると、まず猫たちにご飯をやり、バタバタとシャワーを浴び、顔や髪を整え、スーツを着込んでドアを開けるまで約十五分。
 エレベーターを降りてジャガーに乗り込みエンジンをかける。
「打合せ、十時に赤坂だから、何とか間に合うよな」
 NTVのプロデューサーとちょっと話すだけだし。
 千雪のいる研究室に着いたのは九時ちょっと過ぎだった。
「何や、息せき切って」
「駐車場から走ってきたんで……」
 良太は肩で息をしながら答えた。
「ほな、カフェの方行く?」
「はあ……」
 良太は千雪と並んで歩きながら、声を抑えて「お友達の加藤さんが盗聴器に詳しいんじゃないかと思いまして」と切り出した。
 


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