月鏡30

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「加藤? ああ、俺のダチいうより辻の仲間やけど、盗聴器?」
「はあ、もしか会社とか車とか仕掛けられている可能性があるんじゃないかと……」
 千雪は「何で急に? なんぞあった?」と聞いた。
「実は大きな声では言えないんですが」
 良太は前置きして思わず周囲を見回してから徐に話し始めた。
「ハロウィンやから魔女もでるか」
 ざっと良太の話を聞くと、千雪は笑った。
「笑いごとじゃないです」
「ほんまもんのやっちゃんと対峙したんか、怖かったやろ」
 千雪は自販機でコーヒーを二つ買うと、カフェテリアの隅に移動した。
「いや、その場では突っかかったんですけど、あとで膝が笑いました」
 千雪はうーんと言葉をきってから、「それ、相手、よほど見てからやないと、ほんまに怖い目に逢うで? 特に一人の時とかは」と言う。
「はあ………」
「良太の猪突猛進はええこともあるけど、裏目に出ることもあるからな、気ぃつけんと」
「いや、もう金輪際、やっちゃんなんかごめんです」
 良太は断言する。
「まあでもなあ、向こうから来られると厄介やなぁ」
「冗談じゃないっすよ!」
 情けなさそうな顔で良太は千雪を見た。
「まあ、その工藤さんのSPが何とかする言うてんのなら、何とかしてくれはる思うけど……とにかく盗聴器のことは、加藤に聞いてみて、何なら一緒に行って調べたるし」
「ありがとうございます!」
 良太はテーブルに頭をつけんばかりに言った。
「あとは、あれや、ハッキング? まあ、良太もそこいらへんは注意してるか知れんけど、加藤専門家やし、そっちもみてもろたらええ」
「よろしくお願いします!」
「ほな、加藤と連絡着いたら、またラインするわ」
 いやあ、いざって時の千雪さん、頼りになるわ!
 良太はもうルンルン気分で大学を後にした。
 案の定、NTVのプロデューサーとの打ち合わせは短時間で終わり、十時半過ぎにはオフィスに戻ると、昨日のパーティのお陰でできなかったデスクワークにしばし没頭していた。
 新たな問題が勃発したのはそれから間もなくのことだった。 
「何だ、一体これは!」
 平和そうな青山プロダクションのオフィスにいきなり雷が落ちた。

 


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