月鏡32

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 それから良太は沢村に関することで小田に依頼したことや、沢村を嗅ぎまわっているのは沢村宗太郎の顧問弁護士、真岡久史事務所の息のかかった興信所の調査員で、昨夜もホテルの沢村の部屋と同じ階に部屋を取って沢村のことを監視していたらしいことを話した。
 話し終えた良太は思わず、ふうっと息を吐いた。
 なんで俺、昨日っからものすごくハードなメンドクサイ案件にいくつも関わらなくちゃならないんだよっ!
 おまけに、魔女オバサンに関しては誰にでも話せることじゃないし。
「今後は、バカをやる前に俺に報告しろ。フジタに行ってくる」
 工藤はフンと眉間に皺を寄せ、コートを掴んで足早にオフィスを出て行ったが、明らかに入ってきた時とは違って怒りは何とかおさまったようだと、良太は工藤の後ろ姿を見送った。
「一段落ついたから、お弁当買いに出るけど、良太ちゃんどうする?」
 鈴木さんが立ち上がりながら良太に聞いた。
「あ、お願いしていいですか? 鈴木さんにお任せしますから」
「わかった。行ってきます」
 鈴木さんがオフィスを出ると、良太はまたキーボードを叩き始めたが、そう言えばと気になったのが、先日沢村がここで小田と話していった件だ。
「盗聴器とか、万が一仕掛けられてたら、まずいよな」
 これは緊急に調べる必要がある。
 千雪から早く連絡が来ないかと思いつつ、携帯を睨み付けた。
 一方、フジタ自動車の打ち合わせが終わった工藤は、今朝がた連絡を入れていたMEC電機に向かっていた。
 港区芝にあるMEC電機本社、青山プロダクションの工藤と受付に告げると、すぐに広報部へ上がるエレベーターに案内された。
 広報部のある二十階で降りると、小さな会議室に通され、しばらく待たされた。
 要件は、青山プロダクションの南沢奈々がイメージキャラクターに決まっている冷蔵庫のCMの件ということにはなっているが、無論、今日工藤がわざわざここに来たのはそれとは何の関係もない。
「お待たせしました」
 お茶を出した社員が会議室を出て行くと、代わりに広報部長である波多野が現れた。

 


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