月鏡33

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「ここは携帯の電波を遮断するようになっていますし、常に盗聴器等も私がチェックしていますから、ぶっちゃけても結構ですよ」
 波多野の言葉を受けて、険しい表情を崩そうともせず、工藤は口を開いた。
「一体全体、何であのババアがしゃしゃり出て、しかも良太なんぞを部屋につれこんだりしやがったんだ?」
 工藤はできる限り声を抑えながら言い放った。
「ですからそれは、やはりあの動画がネットに拡散したせいでしょう。魔女の目にもとまるほど広まったということですね」
「だから何でそれが拡散したことで、ババアがでてくるんだって聞いてる」
「残念ながら私は先代の命を受けてはいますが、魔女とは言葉も交わしたことはありませんから、魔女の思わくは存じあげませんが……」
 そこで波多野は少し言葉を切った。
「良太の家族まで調べまくったということは、あなたが良太を大事にしているとわかったからでしょうね」
 工藤はまた苦々しい顔でどこと言うこともなく睨みつけた。
「なぜ魔女にそんなことがわかったかとかは聞かないでくださいよ。私にわかることではありません。が……おそらく」
 工藤は視線を波多野に戻した。
「おそらく、魔女の勘ってやつでしょう」
「勘だと?」
「いや、そう感じたのは魔女だけじゃないかもしれませんよ。まあとにかく、どんな相手なのか知りたかったんじゃないですか?」
 淡々と波多野は言った。
「だから良太を部屋に連れ込んだって言うのか? 何のために?」
 波多野に聞いてわかることではないとは重々知りつつ、聞かないではいられなかった。
「これは私の勘ですが、魔女は何も良太をどうこうするつもりはなかったと思いますよ。現にちゃんと返してますからね」
「問題は良太を連れ込んだことだ! あのくそババア!」
 工藤はドンとテーブルを拳で叩く。
 波多野はふうっと大きく息を吐いた。
「一応音楽も聴けるように防音になっている部屋を選んで正解ですね」
「ふざけるな!」
「ふざけてませんよ、本当のことです」
「あのババアに一言言ってやらないと気が済まない!」
 工藤がイライラと言い捨てた。
「それはあなたの首を絞めることになるとわかってますよね?」
 その言葉に忌々し気に工藤は息を吐く。

 


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