月鏡37

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「それで盗聴器探すんですか?」
 良太は加藤がテーブルの上に置いた機材を見て、尋ねた。
「広帯域受信機とスペクトラムアナライザー。あと、これリモコンスクランブル盗聴器の受信機。これで盗聴器あるかどうか探して、あとは目で探して見つける」
「何か、すごいですね、プロだ」
「タダのオタクです。頼まれればこんな感じで活用してるけど」
 加藤がちょっと笑ったように見えたが、あまり喜怒哀楽がわからないタイプだ。
「誰だ?! 貴様、ここで何をしている!」
 バンとオフィスのドアが開いた途端、怒鳴り声が飛び込んできた。
「あ、工藤さん、お帰りなさい。すみません、今、盗聴器探してもらってて」
 良太は慌てて工藤にとりなした。
 一言報告するべきだったと良太はしばし反省する。
「盗聴器?」
「ええ、一つ見つけてもらいました。誰でも手に入るタイプだそうで………」
「業者か?」
 工藤の表情が険しくなる。
「いえ、千雪さんの友人で」
「千雪の?」
 そこへ買い物袋を提げた千雪が戻ってきた。
「あ、工藤さん、お邪魔さんです」
「千雪、お前暇なのか?」
 工藤は振り返って千雪を見下ろした。
「良太に頼まれたから来たんやないですか。暇なわけないですやろ」
 千雪は笑う。
「工藤さん、鮨取ったんで、一緒に食べませんか?」
 良太が聞くと、「ああ、ちょっと上に行ってくる」と工藤はまたオフィスを出て行った。
「何か、迫力の人っすね」
 工藤が現れてから口を開かなかった加藤が、ボソリと言った。
「加藤、ああいう、迫力の人、尊敬の眼差しで見るもんな」
 千雪がからかった。
「何者っすか?」
「ここの社長」
「あ、そっか、あの人が…………」
 その先を聞かなくても、加藤が何を言いたいのか良太にはわかった。
 工藤が冤罪事件で捕まった時、工藤が何故警察に目をつけられているか、その出自なども話していたからだ。
「何か、大変っすね。身に覚えないのにいろいろ勘繰られるって」
 加藤は神妙な顔で言った。
「経験者は語る?」
 千雪が聞き返した。
「まあ……」
「あ、じゃあ、上の階もおねがいします。千雪さん、すみませんが、出前来るかもなので、お願いします」
 良太は自分の財布を千雪に渡した。
「お、良太、自腹? 太っ腹やな」
「違いますよ、領収書もらってくださいよ」

 


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