「はい、わかりました」
気のせいか、加藤は工藤にそう言われて嬉しそうに見える。
良太は、何だかなと思う。
波多野がネットに流れた動画で工藤にオーラを感じるものがいるかのような言い方をしていたが、千雪がさっき言ったように、加藤は工藤のことを尊敬の眼差しで見ているのかもしれない。
ふーーん。
まあ、どのみち俺もその一人なんだけどさ。
「見つかったのは一般に売ってるヤツで、数メートルくらい音を拾えるくらいで。ノイズも多いし」
加藤は簡単に説明をした。
「今回仕掛けたやつらは、まあそんなところだろう」
工藤はまた祖母の顔を頭に思い描いて忌々し気に言った。
「俺のことや家族のことは興信所かなんかに調べさせたんだと思いますけど」
良太もまた魔女オバサンの鷲鼻を思い出して眉を顰めた。
「千雪さんに聞いてあらかじめ調べてみたんですけど、ホテルのその階の部屋を取ったのは、夜になってからなので、良太さんの車をつけてきた可能性が近いかと思います」
その件も加藤が端的に説明した。
どうやってホテルの部屋のことを加藤が調べたのかは聞かないが、良太は他に盗聴器や盗撮カメラなんかがなければいいのだと一人頷いた。
「でももっと高性能な機材じゃないと引っかからないものもあるかもしれない」
加藤が言った。
「いや、そんな高性能なモンを取り付けられるような連中じゃないだろう。できる限りでいい」
加藤の懸念を工藤は問題にもしなかったが、工藤としては波多野に話したようにドイツに行っているうち良太を一人にすることの方が心配だった。
よもやまた良太をどうこうとかしないだろうと思いたいが。
またぞろイライラと怒りが頭をもたげてくる。
「工藤さん、なんぞ心配事でも?」
千雪が工藤の表情を読んですかさず聞いてきた。
「いや……明後日から俺はドイツだ。映画の撮影もまた京都で始まるし、良太が同行するんだが……」
え、何でそんなこと千雪さんに話すんだよっ!
良太は内心工藤を訝しむ。
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