月鏡47

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「おはようございます。ってか京助さんが用意してくれたんでしょ?」
「細かいこと気にせんと、まあ、大船に乗った気で。って、レンジローバーか」
 テンション高めの千雪はたいして笑えないボケ突っ込みを一人でやってから、「出発進行!」と宣言した。
 そういえば、この状況、何か前にもあったな。
 でもあの時は、気心知れてる藤堂さんや佐々木さんだったから、気が楽だけど、京助さんだからな。
 いや、運転はきっちりしてるだろうけど。
「あの、疲れたら俺代わりますよ? 運転」
「気にするな。五時間六時間なんぞ大したことはない。なんなら、寝て行っていいぞ」
「あ、いえ…」
「遠慮せんかてええで? どうせ俺も寝てるし。気づいたら天国やったとか、ちょっと困るけどな」
 遠慮する良太に、千雪がお気軽なセリフを吐く。
「はあ………」
「はあ、って、良太、京助がいておもろないんはわかるけど、覇気が足りんで覇気が! 京助なんかいないもんと思うとったらええ」
 ぼんやりな返事をした良太の上げ足を取って、千雪は本人を前に言いたい放題だ。
 傍若無人なのはやっぱ千雪さんの方が上?
 一昨日行われた対談の方はいい感じで進んだので、それはよしとしても、夕べは沢村と八木沼の接待で結構遅くなったから、良太はあまり寝てないのだ。
「決してそんなこと思ってませんて。久々の早起きで頭がまだ働かないんですってば!」
「やったら寝たらええ」
「お前がぎゃんぎゃん言うから、寝られねんだろーが」
 京助がボソリと言った。
「わかったわかった。ほな、静かにするよって、良太、お休み!」
 千雪の声を最後まで聞かないうちに、瞼が降りてきた。
 昨日の朝、起きたら工藤は出かけていた。
 ここんとこ工藤はやたらやりたがる。
 一昨日の晩も工藤の部屋に連行されて身体を重ねた。
 しばらく逢えないことを思えば、もうどうにでもしてくれってなもんで、良太もひどく工藤を欲しがって泣かされた。
 工藤に抱かれて眠るとか当分ないんだな。
 そんなことを思うと、良太は急に切なくなった。
 

 


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