月鏡48

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 晩秋の北山杉はまた凛とした美しさをもって、撮影陣を出迎えた。
 朝からの撮影は吐く息も白く、極力防寒対策も整えているつもりだが、良太は寒々しい空気の中で、演技をする俳優陣や撮影するクルーたちを見つめて、タフじゃなきゃやってらんない仕事だよな、と改めて思う。
 今朝がた、日比野監督から、新しいADを紹介された。
「フリーでやってる森村くん。こちら青山プロダクションの広瀬さん」
「よろしくお願いします!」
 警官のようにきびきびと頭を下げる森村に、良太は名刺を出して、よろしくお願いしますと頭を下げた。
見ていると、あちこちでああしろこうしろと言われているが、文句の一つも言わずてきぱきと動き、しかも俊敏で仕事が早い。
体育会系? って感じだな。
「良太、今日から一緒に合宿やな、楽しみ」
 檜山には会うなりそんなことを言われるし。
 でも嬉しそうな笑顔を見せられると、ま、いっかと思う。
 ただし、一晩過ごしてみて、檜山が難しそうと感じたら、とっととプリンスに戻ってもらうつもりだ。
 この際一部屋くらいグレードアップしても仕方ないだろう。
 そうすると、他の誰かの部屋にベッドを一つ入れさせてもらうしかない。
 辻さんとかなら、いいかな。
 まあ、それは今夜のことで。
「え、なに、なに? 良太ちゃんと匠ちゃん、合宿って何?」
 二人の会話を聞きつけた奈々が、早速良太に問いただす。
「あ、いや、実は、千雪さんとかも来ていて、別件の仕事があるんで」
「そうなの? 千雪さんも来てるの?」
「ああ、俺を送ってから、一旦千雪さんの実家によるって言ってた」
 まるでSPのごとく、今日は辻と加藤がバイクで観光客のような顔でロケを遠巻きに見ている。
 休憩に入った時、日比野が良太のところにきて、こそっと言った。
「なあ、朝からあのごつい兄さんたち、ずっといるよな。バイクも気合入ってるし、大丈夫かなあ」

 


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