それに。
なんたって、男も女も関係なく、誰に対してもフレンドリーなんて毛ほどもないはずの工藤が、この佐々木に対しては最初から妙に優しく接しているのだ。
ま、佐々木さんだからな。
「で、ドラマの代役、決まったって?」
「ああ、ええ、揉めに揉めてたんですけど、結局大澤流が受けてくれて。あの人、スケジュール的に結構タイトなんですけど。そう、それが、アディノのCMが好きらしくて、佐々木さんが担当だって聞いて、だったらやるみたいな感じでしたよ」
「それは光栄やけど、まあ、決まったんならええんやない?」
「ええ、大澤さんはアスカさんと弁護士シリーズでこないだも共演してたので、やりやすいと思いますよ、気心知れてるし」
「ふーん、だったら、ええかな。一から作り直すいうことやったけど、実際その方が前のイメージ払しょくでける思うわ」
佐々木はそう言って、ブラウニーを頬張った。
「あれ、でも、この仕事って、青山プロ関係やないんちゃう? なんで良太ちゃんが係りみたくなってんの?」
今思い当たったようで、佐々木が疑問を呈した。
「それが、アスカさんロケで代わりに、俺がドラマの撮り直しとかの会議に出席させられて、そん時、代役の候補を三名に絞って、そのうちの一人が大澤さんだったんだけど、プロデューサーが事務所に打診したら、初めは薬で捕まった水波の代役なんかお断り、みたくけんもほろろだったんです」
「まあ、せやろな、普通の反応は」
「プロデューサー頭抱えちゃって、勝手に工藤さんとこのプロデューサーってだけで、俺まで引っ張り込まれちゃったんですよ」
「なるほど、良太ちゃんいよいよ、プロデューサー単独デビューやん」
「もう、茶化さないでくださいよ、ただでさえ、うちの会社の仕事で手一杯なのに。まあそれがですね、先日、『からくれないに』ってその弁護士シリーズクランクアップしたんで打ち上げやった時に、大澤さんが、社長が断ったけど、自分としてはやってもいいかもとか言ったんで、CMが佐々木さん、って話したら、じゃ、やるって」
佐々木はハハハと笑った。
「さすが良太ちゃん、また株があがったやんか」
「あがらなくていいんですけどね、そんな株。まあプロデューサーは喜んでましたけど」
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