月鏡51

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 勝手なこと言って、俺が頼んだところで、宇都宮さんのスケジュールの都合が悪ければむりなんだからな。
 ってことになると、結局また俺が宇都宮さん級の主演格俳優を探さなきゃってことになるじゃん。
 ったく、これだからオヤジどもは!
 小笠原は既に了解を得ていて、やる気満々だからいいとして。
 また、妙なキャスティングを掲げて、俺に丸投げしてこなきゃいいけど、坂口さん。
 実際ドラマ自体は、東洋グループのスポンサーが決まったところで、局側もゴーサインを出しているので、ほぼ決まりだろう。
 原作は大須賀健の小説で、坂口が脚本を書いたドラマ「田園」も女子高生と四十代の男の恋愛ドラマというちょっとばかりセンセーショナルなところも手伝って、しかも主演が宇都宮ということで、視聴率は二けたいっているし、ネットの反響も上々だ。
 局側はそれに気をよくして、坂口、工藤のコンビでドラマならとりあえずオオコケはないだろうというわけだ。
 そんなことを考えている間にも、視界に辻と加藤の二人がちらついた。
 何だか、落ち着かない。
 こんなSPとか、必要か?
 あの魔女オバサン、波多野がお灸据えるって言ってたし、京都だし、また俺がどうにかなるとか、考え過ぎだろう。
 いつの間にか、時刻は正午を過ぎ、監督から休憩の声がかかった。
 良太は、俳優陣やスタッフに弁当を配り始めた。
「手伝います!」
 ハキハキした声は、周りの気分をも明るくしてくれるのがいい。
 新しいADはにこにこ、きびきびと動いてくれる。
「あ、じゃあ、そっちの箱、皆さんに配ってもらえますか?」
「わかりました!」
 良太も緩慢に動いているわけにはいかない。
「お疲れ様です」
 昔、子供向けの戦隊ものに出ていた俳優、三田園亘は、ありがとう、と人のよさそうな笑顔を良太に向けた。
「子供の時、ウオッチマン、よく見てました」
 つい、懐かしくてそんなことを言うと、三田園はさらに目を細くして笑った。

 


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