月鏡59

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 ホテルは思いのほかハイグレードで、何より広い。
「うわ、いいね~、温泉がいくつかある!」
 檜山は京都まで日比野や浅沼らと一緒に新幹線を使い、あとは日比野が借りたレンタカーでロケ現場まで来ていた。
 荷物は京助がラゲッジに放り込んだ小さ目のキャリーバッグ一つで、スーツなどを入れている良太の荷物の方が大きいくらいだ。
 良太のキャリーバッグは既に京助が部屋に置いてくれていたので、身一つで部屋に入った。
「京助さんらの部屋の方が大きいんですけどね、ワンコ連れだから」
「十分広いよ。日本にしては」
 良太は笑った。
「海外と比べないでくださいよ」
「先に温泉行こ! この露天風呂って入りたい!」
 檜山に急かされて、良太は露天風呂へと向かった。
 どうやら考えることはみんな同じなようで、既に露天風呂は、屈強な男たち数人が陣取っていた。
「お疲れ様です」
 良太は辻誠、加藤雄太、山倉啓、白石淳史のいつぞや大活躍してくれた面々を見てぺこりと頭を下げる。
「おう、終わったんや? まあ、入れや。ええ湯やで」
 辻がのたまった。
 しかしこの四人が雁首揃えているのを見ると、何だか自分が余計に貧相な気になってくる。
 四人が四人ともガッシリ体系で体脂肪が低そうだし、髭をたくわえているものもいて、ちょっと近寄りがたい雰囲気だ。
「そっちは、えらく可愛いわりに鍛えてるな」
 山倉が檜山をちょっと揶揄した。
 さすが合気道をやっているというだけあって、細いわりにしっかり筋肉がついている。
「可愛いはいらない」
 檜山がスパッと言った。
「あ、こちら、能楽師の檜山匠さんです」
 良太は険悪なムードにならないようにと、檜山にも四人を慌てて紹介した。
「今回は面倒なことを引き受けていただいてありがとうございます」
 頭を下げる良太に、「頭下げるとかやめやめ。俺ら、温泉付き紅葉狩りにこんなゆったり来られてラッキーってとこだし」と顎髭の白石が言った。
「将太が来られなくて残念だったな」
「あいつ警備員やってっからな、今回はちょっと無理」

 


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