月鏡60

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 加藤と山倉が話している将太も、工藤の冤罪事件の際には動いてくれた一人だ。
「能楽師いうと、あれ、面つけて、化け物とかになってこう謡ながら動くやつやろ?」
 辻が檜山に聞いた。
「化け物とか鬼とかいろいろ出てくる」
 檜山が言った。
「あの面、っておもろいよな、摩訶不思議な感じがあって」
「舞台を見てください」
 檜山はまっすぐ辻を見て言った。
「せやなあ」
 辻はのんびりと返す。
「辻さんは、千雪さんや研二さんの高校の同級生なんですよ」
 良太は思い出して、檜山に説明した。
「え、研二の?」
 辻もこれには反応した。
「お、研二、知ってるん?」
「ええ。茶会で逢ってから、舞台にもきていただきました」
「あいつ、ええやつやろ? こん中でいっちゃん強いで? きっと」
 すると、他の面々も、それには頷いた。
「そうですか」
 檜山は笑みを浮かべた。
 そこは素直なんだな、と良太は檜山を見つめた。
「でも、檜山さんも強いんでしょ? ニューヨークで襲われそうになってでかい男を投げ飛ばしたって」
 良太の科白には、みんながおおおっと野太い声を上げた。
「研二に聞いたのか? でかい男っても、所詮飛び道具持たなきゃ、何もできない輩だから、良太だって投げ飛ばすくらいできるよ。コツを覚えれば」
「檜山さん合気道の達人だから、言えるんですよ」
 どうしても拗ねたような口ぶりになる。
「おっ、合気道? なかなかやるじゃん」
「そんで俺ら見てもひるまなかったわけだ」
「さっき入ってきた若いやつ二人、俺ら見てすごすご逃げて言ったもんな」
 ガハハハハ、と白石が笑うと他の男らもつられて笑う。
「そりゃ、皆さんが集まってれば、何者だって逃げ出しもしますって」
 良太が躊躇なく言った。
「お前、歯に衣着せぬ物言い、千雪の同類やな」
 辻が苦笑交じりに言った。
「こいつは相手が誰だろうとズケズケ言うからな」
 後ろから声がして入ってきたのは申し訳程度にタオルで前を隠した京助だった。

 


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