月鏡61

back  next  top  Novels


「一応、相手を見て言ってますよ」
「どこがだ? 弱っちそうなくせに猛者に平気で喧嘩売る」
 湯に身体を沈めながら京助が揶揄する。
「そんなことしませんよ。どうせ、虎の威を借るとか言いたいんでしょ」
「言わねェさ。お前トラにも食って掛かるからな」
 京助の科白に檜山はくすくす笑う。
「良太、キレると怖いもんな」
「こんな弱っちいのつかまえて怖いとかないっしょ」
 檜山に抗議して良太は眉を寄せる。
「でも一応、俺も皆さんと同じ体育会系っすから。腕っぷしは強くないけど」
 良太はとりあえずそれだけは宣言してみた。
「へえ、良太、何やってたんだ?」
 ニヤニヤと笑う山倉から声がかかる。
「野球、ですけど。ガキん時から。これでも沢村を三振に取ったこともあるんで」
 一応、自慢にもならないことを付け加えてみる。
「へえ、沢村て、関西タイガースの? あの沢村と試合したことあるんか?」
 辻が突っ込みを入れる。
「大学の時、までですけど。六大学リーグで」
 沢村の名前を出したところで、まだあいつの問題、全然進捗なしみたいだな、とそのライバルを思いやった。
「おお? 大学どこだったんだ? 俺もR大だった」
 加藤が六大学の一つを上げた。
「え、いや、その、万年最下位、でしたけど」
 尻すぼみにボソボソ口にした良太に、「うっそ、良太ってT大出? 見えない!」と白石が大仰に喚く。
「はあ、野球しかやってなかったんで………」
 すると檜山が、「良太、野球やるためにT大行ったんだって。それってすごくない?」と加勢する。
「まあ、人には色々目的もあるわな」
 思い切り上から目線で京助が言った。
「じゃあ、高校、野球で有名なとこだったんだ?」
「いや、川崎第一って、野球でも鳴かず飛ばずの高校で、一応、県大会までは行ったんですけどね」
 加藤に聞かれて良太は答えた。
「お、ひょっとして神奈川県民だった? 俺、横須賀」
「え、同県人?」
 すると山倉が「俺ら昔、湘南鉄拳隊ってブイブイ言わせてたんだぞ、みんな同県人だ。淳史は横浜、啓は湘南」と、嬉々として言った。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村