月鏡62

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「同県人ですね。……湘南鉄拳隊……っすか?」
 ここでまたベタなとか言ってしまいそうになるところを、良太は寸でのところで抑えた。
「お前、今、ベタな名前、とか思うたやろ?」
 辻がすかさず言った。
「ま、さか、滅相もない!」
「ほんと、ベタなネーミング!」
 良太が抑えたことを檜山が笑いながら言うので、良太は焦った。
「まあ………ベタなことやるのが、高校生どもってことさ」
 白石がフンと鼻で笑った。
「そういや、千雪はどうした?」
 思い出したように加藤が京助に尋ねた。
「ああ、あいつは温泉恐怖症」
「温泉恐怖症?!」
 白石と山倉がハモる。
「何それ?」
 ああ、と良太は思い出した。
 二月に軽井沢で京助の主導でスキー合宿をやった際、千雪の同級生の一人三田村が自慢げにそのことを話していた。
「ガキん頃、修学旅行先の風呂で、クラスメイトに襲われて逆にタコ殴りにしたって話」
 辻が淡々と説明した。
「何だよ、それ、イジメじゃん」
 山倉がビシッときつく言い放つ。
「いや、わからないでも……まあ、からかいがエスカレートしたってくらいじゃね? ちょっとあいつ綺麗過ぎるからな」
 加藤は子供の心理を考えて口にした。
「お前も加担したのか? 誠」
 白石が眉を顰めて聞いた。
「いや、俺、クラス違ごたし。それに中学頃から群れるの好きやなかったからな。俺で断罪すんなや」
 辻はまた淡々と返す。
「集団で来られるとやっぱ怖いよ。俺もガキの頃からこんな顔してたし、女みたいとかいじめられた」
 檜山がさらりと口を挟んだ。
「俺もガキの頃からこんな顔で、皆に遠巻きにされてたさ」
 ついでのように白石が言った。
「お前、こんな顔、だけじゃねぇだろ? こんな身体ってのも遠巻きの原因じゃね?」
「…るせえよ!」
 からかう加藤に白石が反論する。
「すみません、貸し切り風呂付のホテルにすればよかったですね」
 千雪が露天風呂に入れないことを考えなかったと、良太は京助に詫びをいれた。

 


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