月鏡64

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 Lサイズの浴衣を着ていても、まだ丈が足りずに脛毛が見えている者もいる。
 しばらくは、食べて飲んで、良太も負けじと健啖ぶりを発揮したものの、白石、山倉、辻らの豪快な食べっぷりには呆気にとられた。
 そんな時、良太の手元で携帯が鳴った。
 工藤か、とも思ったが、遠野、と画面に表示されているのを見ると、良太はバスルームに入り、洗面台の前で電話を受けた。
 案の定、沢村を付け回している男に動きがあって、何と、先手を打って先にカメラを仕掛けたところ、沢村やアスカまで付け回している調査員の男が、どうやってか沢村の部屋に入り、盗聴器と盗撮器を仕掛けたという。
 遠野の電話を切るとすぐ、沢村を呼び出した。
 沢村は車で帰宅途中だというので、駐車場に着いたら車から電話をくれるように言うと、一応、工藤にも報告した。
 工藤は、帰るまでに小田に怒鳴り込めって言っておけ、と息巻いて電話を切った。
 はあ、と一つ溜息をつくと、良太はバスルームをいったん出た。
 しかし陽気な面々だ。
 先日、工藤の事件の時には重苦しい状況にあったせいか、皆がいかつい顔をさらにいかつくしていた気がする。
 白石や辻も今夜はずっと笑顔を見せている。
 加藤と京助はある程度食べると、あとは飲む方に専念しているようだ。
 しばらくして、手の中の携帯が鳴ったので、良太はまたバスルームに戻る。
 沢村は駐車場で車からかけていると言った。
「うん、こないだ、言っただろ、遠野さんが、お前の部屋とアスカさんの部屋にカメラ仕込んだって」
 良太は、男が沢村の部屋に盗聴器と盗撮器、仕掛けたらしいことを告げた。
「クッソ! だったら、早いとこ告訴してくれって小田先生に言ってくれよ」
 工藤同様沢村もいい加減焦れているようだ。
 もう少し我慢するように言ったものの、良太としても腹立たしいし、早く何とかならないかとは思うのだが、自分ではどうにもならないのがもどかしい。
「で? そもそも、良太何に襲われそうやて?」
 隣に座る千雪が足元のシルビーを撫でながらいきなり良太に切り込んできた。
「え、いや………」
「工藤さんが、こいつらを用心棒にするほど心配しとるいうんはただ事やないやん」
 どうせ工藤の冤罪事件の時にも協力してもらった面々なので、この際言ってしまっても構わないかと、良太も思うのだが。
 しかも、波多野の弟子も千雪さんならよし、みたいなことを言っていたし。
 だが、千雪ならよしでも、彼らはどうなんだろう。
 うーん、どう説明したものか。
「実は………ハロウインの夜に魔女オバサンに捕まりまして…………」
「へえ?」
 千雪はバカにしたような顔で良太を見た。

 


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