月鏡66

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「さすが、千雪さん!」
 確かに魔女オバサン、中山富貴子だ。
「このババアがドンってわけか」
 今まで黙って聞いていた京助がボソリと言った。
「やから、極力争いは避けて、万が一良太をどうとかって時だけ動く、いうんがベターやな。そん時は助っ人呼べや」
 千雪が指令を下す。
「どうとかなんてごめんです……俺」
 情けなさそうに良太が主張する。
「まあ、撮影クルーの中には俺や森村もいるし」
 檜山が言った。
 誰も魔女が誰だかとかは聞かない。
 それはありがたかった。
「けどなあ、撮影終わって東京戻ったら、工藤さん戻ってきはるん?」
 千雪に聞かれて、途端に良太はうなだれた。
「いえ、まだ数日は………」
 京都から無事に帰っても、まだ狙われる可能性があるということだ。
「鉄拳マンも動いてくれよるんやろ?」
「多分……」
「工藤さんの事件の時と同じで、やっぱあれか。ネットに出回った工藤さんの動画」
「ええ、まあ、そうらしいです。ってか、何? 俺、こういうのほんと嫌で、いっそ魔女オバサンに直接聞きたいです」
 良太が訴えると、「殴り込みはやめろ」とすかさず京助に却下された。
「わかってますけど………」
 こちらから中山会に関係を持つようなマネは絶対厳禁なのだ。
「まあ、俺らに任せとけばええて」
 千雪が軽く言った。
「ここは飲んでしばし忘れる!」
 檜山がワインをとぽとぽと良太のグラスに注いだ。
「檜山さんも酒豪ですよね………俺ちょっとトイレ………」
 良太はまださほど飲んではいないが、みんなの半端ない飲みっぷりに圧倒され、酔いが回りそうだ。
 トイレから出てきて自分の席に戻った良太は、「あれ、俺の携帯……」とあたりを見回した。
「あ、これか? 良太の携帯?」
 次にトイレに行って出てきた白石が、足元に落ちている携帯を拾い上げた。
「え、ニャンコ………」
「あ、そうです、それ、俺の………」
 ロックもしていなかったのですぐに待ち受けが出てきたのだろう。
「あら、ちょっと、可愛いじゃないの!」
 白石の声が裏返った。
「へ…………?」
 ぽかんとした顔で良太は白石を見つめた。
 今の科白がガッシリ体系脛毛出し男から発せられたのかどうか、良太はしばし悩んだ。
「おい、淳史、素が出てるぞ」
 笑いながら加藤が言った。
「良太が面食らってるって」
 山倉もヤジを飛ばす。
 


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