月鏡67

back  next  top  Novels


「うるさいわね! 可愛いもんは可愛いのよ!」
 確かに白石の口から飛び出した言葉だ。
「良太、ニャンコいるの? あたし、ニャンコには目がないのよ」
 携帯を差し出された良太は「二匹いて、ナータンとチビ」と答え、猫の画像を白石に見せた。
「きゃ、何、この可愛さ! でも、一人暮らしじゃなかった? 家開ける時、ニャンコたちどうしてるの?」
 白石は良太の携帯の画像をデレっとした表情で見ながら尋ねた。
「俺、会社の上の部屋借りてて、社員寮、みたいな。それで、会社の経理の鈴木さんが猫好きで、俺のいない時はいつも見てくれてるんです」
「あらそう。幸せね~、この子たち」
 何となく白石の雰囲気もさっきのごっついオッサンから柔和な感じになっている。
「あたしも好きだから欲しいんだけど、一人暮らしで、部屋も狭いから、可哀そうで、ネコカフェとか入り浸ってるのよ。ああ、可愛い!」
 良太の携帯に見入っている白石を顎でしゃくって、辻が言った。
「ま、そういこっちゃ」
「高校ん時、こいつがいきなりこうなった時は、天地がひっくり返ったかと思ったけど、仲間うちではオープンにしてるし」
 山倉がわかりやすく付け加えた。
「あ、そうだ、淳史、教えてやろうと思ってたんだ! お前のど真ん中のタイプ、いたぞ! ドSで、ガッシリ系で、お前よりでかい頼りがいのありそうな男!」
 加藤が思い出したように言った。
 それを聞いた良太は、え、とすぐに思い当たる。
「え、ほんと?! どこに行けば逢える?!」
 猫の画像を見ていた白石は途端に目を輝かせて加藤を振り返った。
 千雪が良太を見た。
「こないだ会ったんだ。カッコいいおっさんだぜ? 良太の会社の社長さん。前に千雪に協力して怪しげな連中ボコったことあっただろ? あの時の社長」
 加藤の説明に、「ウソ、じゃあ満更何にも関係ないってわけじゃないのね?」と白石は舞い上がり気味だ。
「おい、加藤、良太の会社の社長やなんて、妻子あるやろ? 淳史ぬか喜びさすことになんぞ」
 二人のやり取りを聞いていた辻が横やりを入れた。
「あ、そっか、良太、社長って、妻子あり?」
「え、あ、いや、ない……っすけど………」
 加藤に聞かれて良太はしどろもどろに答える。
「ほら、いないってよ」
「うわあ、どうしよ!」
 白石は良太の携帯を持ったまま、悶えるように身をくねらせた。
 

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村