月鏡68

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「どうしよも何も、加藤、お前、自分が彼女とうまくいってるからって、淳史を百パーセントマジムリな相手にたきつけてどうすんだよ」
 山倉は冷静に加藤を窘める。
「何で百パームリとか決めつけんだよ。実際こいつのタイプの男なんかそうそういねぇぞ?!」
「アホやな、妻子ないいうたかて、そないカッコええ男に相手がいないわけないやろうが」
 ムキになる加藤に、辻が反論する。
「いいのよ。百パームリでも、夢を見るくらいいいじゃない!?」
 白石は本当に夢見る乙女のような表情で口を尖らせた。
「あ、ごめんね、ありがとう。猫ちゃん、可愛いわね!」
 やっと携帯を握ったままなのに気づいて、白石は良太に返した。
「あ、いえ………」
 ってか、これってどういう事態なわけ?
 良太の頭の中で思考がまだ彼らの話について行っていないのだ。
 目の前の白石さんって、どうみてもいかついオッサンだけど、中身は乙女????
 いや、テレビ局に出入りしている人は数人知っているけど、いや、ここまでギャップが大きい人は初めてだし、しかも身近にいるとかって………。
「ごめんね、良太。びっくりした? でも、これが本当のあたし。こいつらの前だとオッサンのふりしなくていいから、楽なのよね」
「フリじゃなくて、立派にオッサン」
 山倉が茶々を入れる。
「うるさいわね!」
「でも生きにくいよね。マイノリティの生存権は何とかアピールできても、人と違うってだけで、攻撃してくる連中もいるし」
 真面目にそう口にしたのは檜山だった。
「仕方ないわよ。こんなオッサンが、あたしがあたしがなんて言ってたら、誰だってキモイって思うわよ」
 急にしんみりと白石は肩を落とす。
「バアカ、キモいとか思ってたら、俺らダチなんかやってねぇだろ! もう高校ん時からだぞ!」
 加藤が声を張り上げた。
「わかってるわよ。みんなには感謝してるし、大事な仲間よ!」
 今度は泣きが入りそうになる。

 


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