月鏡69

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「ああ、もう、しけた話はもうナシだ! お前ら、マイノリティだのなんだの、考えすぎだってぇの! 自分の思うように前に進めばいんだよ!」
 そこへ活を入れたのは京助だがすぐさま千雪が抗議する。
「世の中、みんな、お前みたいな超ポジティブに進めるやつばっかやないいうこっちゃ。ていうか、考えなさすぎやろが」
「クサそうだのキモイだの言われまくって、コスプレして楽しんでるような変人が何を被害者面しやがって」
「誰が被害者面や!」
 こっちでは声高に内戦が勃発し始めたのを見て、「ちょ、二人ともヒートアップしすぎ! ホテルから苦情きますよ」と良太は二人をマニュアル通りな言い方で宥めにかかる。
「ああいう、ごり押しな開き直りカップルみたくうまくは行かないよな。俺、片思いの男がいるんだ。淳史と似たり寄ったり」
 良太のこちら側では、ワインをゴクゴク飲みながら、檜山が白石を捕まえて告白すると、白石が「え、そうなの? 苦労するわね、お互いに」と相見互い、頷き合っている。
 あちらでは、山倉や加藤は焼酎の飲み比べをやっている。
 いやあ、もうかなりみんな酔っているってことだよな。
 良太はもう何も言うべき言葉がみつからない。
 シルビーは皆から離れたところにあるペットベッドで丸くなっている。
 すると辻と目が合い、辻がおいでおいでをしている。
 良太は立ち上がり、辻のところに歩み寄った。
「こいつら、これ以上羽目外すこともないやろし、明日も早いんやろ? もう部屋戻って寝た方がええで」
「え、でも………」
 確かにもう真夜中を軽く超えている。
「あとは勝手に寝るやろ。ほっとけ。部屋まで送るわ」
 良太は辻の言葉に従うことにした。
 すると京助がやってきた。
「俺も送って行く」
「すみません……匠、大丈夫かな」
 振り返ると、匠がほてほてとおぼつかない足取りでやってきた。
「俺も部屋戻る………」
「大丈夫?」
「……ん、もう眠い………」
 良太と檜山は辻と京助に送られて部屋に戻った。
「じゃあ、おやすみなさい」
 辻と京助はかなり飲んだらしいのに、平気そうだ。
 良太がドアをロックして振り返ると、既に檜山は眠り込んでいた。
 良太は毛布を掛け直してやると、トイレを使ってから目覚ましをセットし、ベッドにもぐりこむとあっという間に眠りにおちた。
 大宴会がウソのように翌日から二人一組二交代制できっちりみんな自分の役目を果たしていた。
 何ごともなく撮影最終日が来て、ホテルに帰ってきた、という時、静かに事が起きた。

 


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