月鏡71

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 京助は駐車場からまだ上がって来ておらず、檜山と千雪はエレベーターが降りてくるのを待っていた。
 数人の客がバラバラとフロントに向かい、千雪は何気なく良太を見、またエレベーターの方を見てから、再びフロントに目をやった。
 その時、フロントでFAXを受け取っていたはずの良太の姿がないことに気づいた。
「え……」
 すぐに周りを見渡した。
 と、入り口の回転ドアからちょうど二人の男に挟まれた良太らしき姿が外へ出るのが見えた。
「匠、部屋、戻っとき!」
「え……?」
 千雪の声にただならぬものを感じた匠は、初めて良太がいないのを知った。
「俺も行く!」
「あかん! 匠が怪我でもしたら良太の責任になるで。部屋で連絡係りや」
 あとを追おうとした匠を千雪は制した。
「京助、良太、やられた! ホテル右出て朱雀!」
 携帯で京助を呼び出した千雪は、出口を出たところで良太が乗せられた黒のバンが走り去るのを視界にとらえた。
 数分で京助が運転するレンジローバーがエントランスに現れた。
 待っている間に辻に事態を伝えた千雪は、助手席に乗り込む前に、落ちている携帯を見つけた。
 良太のものだった。
 京都の最終日、もしやと思った千雪が皆に言い渡していたため、京助だけでなく今夜は千雪を含めて誰もアルコールを取っていない。
「白川通りや!」
 千雪はタブレットを開き、アプリを開いて画面を見つめながら声を張り上げた。
 携帯の向こう側では、辻の運転するSUVは、二台のバイクを従えるようにして猛スピードで走っていた。
 ナビシートには加藤が乗り込み、同じくタブレットの画面を見ながら辻に良太の上着の内側につけておいたGPSを追う。
 一方、部屋には戻ったものの、気になって仕方がない匠は、森村の携帯を呼び出していた。
「あ、モリー! 今どこ?」
「良太くんの動きがおかしいので、車でGPS追ってます。千雪さんが良太につけてたでしょう?」
 やはり森村は素早かった。

 


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