月鏡72

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「そっか、こっちも俺以外みんな、良太のことを追ってる」
「じゃあ、伝えてください。おそらく修学院桧峠町にある屋敷に向っている」
「わかった」
 檜山は千雪の携帯を呼びだし、それを伝えた。
「檜峠町やな? 了解」
 それを聞いていた京助はぐんとアクセルを踏んだ。
「そこに屋敷があるらしいで」
「フン、やつらのアジトか」
「アジトとか言うたら失礼やろ。こないだのチンピラとちごて、魔女の館やし」
 吐き捨てるように言う京助の言葉を千雪が訂正した。
「せえけど、ほんまに最後の最後で動きよったな」
 千雪は淡々と感想を述べた。
「しびれを切らしたんだろ。俺らずっと良太の周りに張り付いてたからな」
「ほんまに何の用があるんや? 良太に。それが疑問や」
「表だって会社に逢いに行くわけにいかねぇからだろ」
「やから拉致るて短絡的過ぎ、アホちゃうか。ってか、何で良太?」
「さすがに工藤本人拉致ると、そこで関係性ができるから、ババアも孫の立場を一応かんがえてるんじゃね?」
「ほんで拉致るとか、やっぱアホや」
 千雪はすぱっと吐き捨てた。
 何となく良太に危害を加えるつもりはないような気がするが、断言はできない。
「GPS止まったで。ここが屋敷やな。京助、次の交差点で左曲がって」
 千雪はその屋敷に向かうべく京助に指示した。
 当の良太は、フロントで受け取ったFAXの意味が分からず何だろうと見ていた時、左右に男が立ち、右に立った男に「静かにしろ」と耳打ちされた。
 二人に両腕を取られた良太は喚くわけにもいかず、黙って男たちに従った。
 ほんとに現れやがったのかよ!?
 自問しつつ、エントランスを出ると、通りに横付けされたバンに押し込められた。
 人通りも少なく、街灯も暗いため、騒がなければ誰も気づかないだろうと思われた。
 何の用だとか、誰だ、とか聞いたところで、あまり意味がないと、良太は黙って連れ去られるままになっていた。
 だが携帯を取られて、車に乗る前に捨てられたことが、良太は面白くなかった。
 くっそ、スケジュールとか、見やすい携帯だったのに!
 データはバックアップしてあるからいいのだが、また着メロ設定をしなくてはならないのが手間だ。
 そんなことを考えながら運転している男の顔がバックミラーに写ったのが見えたのだが、本当に狼男のような髭面の男だった。
 両側にいる男たちをこそっと観察すると、こちらもやたらでかくてごつい顔の男と少し痩せぎすで目が鋭そうな男がフランケンとドラキュラに見えてくる。

 


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