月鏡74

back  next  top  Novels


「父母には親不孝をしたこともわかっちゃいるけど、どうしようもなかった。でもね、やっぱり息子はいいけど娘はうちの業界には置いておけないと思ってね、手離したのよ。父母は可愛がって育ててくれたのにね」
 身の上話を聞かせるためだけではないだろうと思いつつ、良太は黙って老女の話を聞いていた。
「燃え上がると周りなんか見えなくなっちゃうとこだけは私に似たのね、ちょうど私と同じ高校卒業くらいの時よ、さぎりはでも、結局米兵に捨てられた上に子供がいるのがわかって、ウツっぽくなっちゃって、さぎりは弱かった………。あたしは遠巻きに見守るしかできなくて、高広が生まれて間もなく命を絶ってしまって………」
 富貴子はそこで言葉を切った。
 良太もそれを知った親や家族はいかばかりの心痛かとは思う。
「私や父母もがっくりだったけど、息子がね、嘆いてもう、カタギの家にやったのになんでだって言ってね。表だって会うことできなかったから」
 息子って今の組長?
 どういう境遇だろうと、身内のしかも自死とはつらいなんてものではないだろう。
「息子も娘も、ここが弱いんだよ。あたしじゃない、連れ合いに似たんだろうね。あの人、心根は優しすぎる人だったから」
 富貴子は手を胸に当ててそんなことを言った。
「そこいくと高広は、あたしに似て実際息子より強心臓で、うちにもあんな肝が据わったやつなんかどこにもいやしない。できるもんならリクルートしたいくらいだよ」
 まさかこの人、それが目的で?!
「工藤さんは心底反社会的勢力を嫌ってますから」
 良太は言わずにいられなかった。
 嫌っているというより憎んでいるのだ。
 それを軽々しくリクルートとか言ってほしくはなかった。
「そんなことはわかってるわよ、イチイチ嫌なことを言ってくれるね」
 富貴子はジロリと良太を睨む。
「こないだの冤罪事件も、実は島本組と芦田組の抗争に端を発した、工藤さんを陥れるために仕組まれたものだったわけでしょう? あなたが背後で中山会を牛耳ってるのなら、とっとと抗争なんかやめさせたらどうですか?」
 すると富貴子は良太をじっと見つめた。
 

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村