月鏡75

back  next  top  Novels


「ふーん、よく知ってるじゃないの。やっぱ良太ちゃん、ただ可愛いだけの坊やじゃないようね」
 だが、そのあとまた富貴子は大きくため息をついた。
「残念ならが寄る年波で、あたしも力が及ばなくなってるし、そう簡単にはいかないんだよ」
 フランケンとドラキュラは富貴子の後ろで黙ってただ立っている。
「でもねぇ、何の因果か、高広が昔付き合ってた娘、ちゆきって言ったよね、あの子とつきあってた頃はこれで幸せになれるって傍でみてても思ったのにね、まさか自殺するなんて」
 富貴子は首を横に振った。
「母親のことは生まれてすぐの話で、高広も実感もないと思うけど、恋人に死なれちゃね」
 ちゆきのことは良太も名前を聞くだけでもつらくなる話だ。
 愛する人に自分で命を絶たれた日には、世の中も何もかも恨みたくなっても仕方がない。
「大体、あたしは政治家ってのが大っ嫌いなんだよ。そんなもんを親に持ったらまともな人間なら縁を切りたくもなるよ」
 妙な論理だが、富貴子はそうやって工藤に逢えないながらも見守っていたというわけか。
「政治家も嫌いですよ、工藤さん、反社会的勢力と同様に」
「いちいち嫌味な子だね」
 しれっと口にする良太を富貴子はまた睨み付けた。
「ご用件を早いとこ言ってくれませんか? 工藤さんが留守の間、会社の切り盛りしなくちゃならないんで、そろそろ帰りたいんですが」
 全く、こっちの都合も考えずにこんなとこに連れてきやがって、この魔女オバサン!
 昔話を聞いてやりたいところだが、もう日付が変わろうとしているし、良太もいい加減イラついてきた。
「大体、俺の携帯、勝手に捨てて、工藤さんから連絡入るかもしれないのに、どうしてくれるんですか!」
「だって、GPSが入ってると面倒だから捨てろって、そいつらが」
 その時、玄関あたりで物音や怒鳴り声がした。
 やがて何人もの足音がしたと思うや、ドアが開いてまず狼男が倒れ込みその背後から屈強な男たちが四人ばかり現れた。
「何だい、お前たち。不法侵入じゃないのかい」
 通る声で富貴子がのたまった。
 その横にはフランケンとドラキュラが構えている。
「そういうあんたらは拉致監禁だろうが。この場合警察に捕まるのはあんたらの方」
 偉そうに説明したのは京助だった。
 京助の横には辻と山倉、それに白石が凄んで立っている。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村