月鏡78

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 門の外で、車の中で待機していた千雪と加藤は、良太の顔を見てほっとした様子だった。
 良太は落ちていた携帯を渡されて、どうやら壊れていないのを確かめると、よかった~と胸を撫で下ろした。
 それからホテルに戻ると、また京助と千雪の部屋にみんなが一旦集まった。
 良太から連絡をもらった檜山もやってきて、今度は缶ビールで祝杯となった。
 ただ、さほど大騒ぎにはならず、どことなくみんながしんみりしていた。
「なんかさ、確かに相手は極道だけど、それを度外視すれば、ロマンよね~」
 ビールを飲み干してから、白石がしみじみと口にした。
「山の手のお嬢と極道の大恋愛! 小説なんかより大ロマンスだわ」
 両手を胸に充てて白石は大きくため息を吐く。
「淳史、お前、中山会の極妻に共鳴してんの?」
「だから、極道は置いといてッて言ったでしょ!」
 山倉に揶揄されて白石は言い返す。
「どうせ人生一回こっきりじゃない? この際、世間にどう言われようと、愛を貫き通すってところがいいんじゃない」
「裏でヤバいことしててもかよ?」
「人間やってたらそんな人いくらもいるわよ! 断頭台に消えたマリーアントワネットだって、そうじゃない?!」
 フンと山倉は鼻で笑う。
「はあ、そんな大恋愛とか縁がないもんな、いくら憧れてもこの先まず、そんなのないと思え、淳史」
「うるわいわね!」
「確かに」
 白石に同調するように檜山が言った。
「そういうののほうが純粋な恋愛でいいよな。うちのおどろおどろしい跡目争いときた日には、ほんとウンザリだった」
「え、あんたんち、お能の家元だっけ? 大変そう」
「兄貴の母親って、親父の愛人になって、兄貴を家元にするために兄貴を生んだんだぜ? 親父が俺の母親と結婚したのなんか、財産狙い? 愛もへったくれもなくて、俺が生まれたもんだから、俺と兄貴がじゃなくて、周りの連中がドロドロの跡目争い。母親も亡くなったし、とっとと俺、うち出て、縁切ってやった」
 それを聞くと、白石が、まあ、苦労したのね、と同情の目を檜山に向けた。
「そんな苦労とかはないけどさ、俺の周りには愛とかないから、工藤の祖母の大恋愛、羨ましいって」
 何やら先日の宴会から、白石と檜山はやたら意気投合している。
「こんなの預かってきてしまったけど、工藤さんに何て言おう」
 良太は千雪に事のあらましを話して預かってきたペンダントを見せた。

 


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