月鏡79

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「へえ、年代物やな。アンティークて、これホンモノの石? 価値とかはわかれへんけど、魔女がそこまでして渡したかったってことは、工藤家にとっては大事なモンなんやろな」
「知り合いに鑑定してもらおう」
 京助が言った。
「せやな、ま、中山会とは全く関係のないもんやろし」
「あ、平さんならわかるんじゃないかな?」
 良太は顔を上げた。
 それには千雪は難しい顔をした。
「ああ、どやろな。平さんは、さぎりさんのことは知ったはる思うけど、魔女の昔のことはわかれへんちゃう? 工藤家の顧問弁護士って亡うならはったんやったな」
「確か今も、工藤家の財産に関しては、代替わりしてその息子さんが管理されてるって聞いたけど」
 平造から聞いたはずの記憶をたどりながら良太が言った。
「息子やのうて、当時を知ってる人とか、いてへんかな」
「藤原が何か知ってるかもな」
 京助が言った。
「ああ、藤原さん!」
 千雪も頷いた。
「藤原さんて七十ちょっとやろ? 案外、魔女が藤原さんのマドンナやったりして」
「あの人、固すぎるんだよ。色恋とか関係ないみたいな顔してるし」
 千雪にそう返すと、京助は缶ビールを空けた。
「ホンモノのバトラーって感じやもんな。昔の映画に出てきたみたいな」
 千雪の話に、「あ、知ってる! The Remains of the Day、DVDで見た」と檜山が言った。
「藤原さんて、あんな感じ?」
 檜山が聞くと、千雪は微笑んだ。
「せやな」
「すみません、ついてけません、ナニソレ?」
 半挙手した良太が口を挟む。
「やからお前、工藤さんの後継ぐんなら本、読み! 原作はカズオ・イシグロ、日本人でイギリスに帰化して、前にノーベル賞もろた作家おったやろ? 映画見るんでもええけど、ええ映画やで」
「はあ………そういえば、そんな人いたような………The Remains of the Day、ですね」
 良太は首を傾げながら、携帯にメモる。
 やっと能の演目をいくつか見て、理解しつつあるところなのに、まだまだ知識を上積みしなくてはならないわけか。


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