月鏡81

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 しばらくものも言わずに食べるのに夢中になっていた良太は、ようやく人心地がついたところで、改めてひとみや竹野にご機嫌伺いをした。
「まあ、飲みなよ」
 竹野が良太にワインを勧めた。
「ありがとうございます」
「何か、水波ので、良太も振り回されてるんだって?」
 竹野が笑いながら聞いた。
「はあ、ほんと、もう、勘弁って感じですよ」
「あいつ、マジ、バカだよね。前っから浮ついてたし、あいつとの共演話も過去あったけど、みんな蹴ってた」
「それ、正解っすよ。うちも気を付けてたんですけど、なんか付き合いとかがあって、それで。CMの方は、もうスポンサーが水波推してたもんだからトバッチリで」
 良太の不満気味な発言に、ひとみも同情の目を向ける。
「付き合いとかあるとねぇ、難しいよね。そもそも何だって薬なんかやるんだって話よ!」
 憤慨しながらひとみが喚く。
「まあ、CMとかはね、信頼が重要だからダメージ大きいよね。ドラマや映画は、捕まった人が出てるからって、それをどうこうっていうのもな、とは思わないでもないけどね」
 宇都宮が冷静な意見を述べた。
「確かにそうなんですけどね、でも業界全体が今、犯罪者、という目で見て徹底的にたたくみたいな風潮ですからね」
 工藤がもしあの事件で送検とかされていたら、と思うと、良太は冷や汗が出る思いがする。
「犯罪は仕方ないと思うけどさ、不倫を徹底的にたたくって、私はどうかと思うけど」
 ワインをゴクゴク飲み干した竹野が言った。
「別にそういうドラマに出たからってんじゃないけど、不倫なんていつでもどの時代にもあることでさ、それを犯罪と同等に叩きのめすって風潮はどうかと思う」
「うーん、それって、ネットが大きいよね。正義を振りかざしたイジメってやつ?」
 良太もそれは常々思っていた。
「ああ、でも、まあ、あたしも自分の好きなスターが不倫とかしたら、こき下ろすけどさ」
「何だよ、それ」
 みんなが笑う。
「だって、どのみち、そんなもんよ」
 さばさばと竹野は結論づける。
 良太はそんな楽しいひとときに、例の坂口と工藤に迫られている来年のドラマの件を宇都宮にどう切り出そうかと一計を案じていた。
 とにかく工藤が帰ってくる前に、宇都宮の件をクリアにして、工藤には京都での報告とペンダントを渡さねばならない。
 工藤が帰ってきたら、加藤の要望で、今回良太のSPとして動いてくれた面々を工藤に引き合わせることにもなっている。
 


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