月鏡84

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「来年のスケジュールとかって、やっぱかなりたてこんでますよね?」
 すると宇都宮が良太を見下ろした。
「ははーん」
 宇都宮はにやりと笑う。
「何かさ、いつだったか、坂口さんと出くわした時も、良太ちゃんみたいなこと聞いてきたんだよな」
「え……」
「あの時はまだわからないって言ったんだけど、さては坂口さんに何かたきつけられた?」
 さすが宇都宮、勘がいい。
「はあ、あの、ぶっちゃけ、ドラマのオファーなんですけど」
 良太はこの際だと、正直に言った。
 青山プロダクションの小笠原とダブル主演で、医者と刑事がバディを組んだアクション交じりの娯楽に徹したドラマだと良太は説明した。
「スポンサーは東洋商事メイン、工藤プロデュースで、坂口さん、乗りに乗って本書いてるって話で」
「ナニソレ。ほぼゴーサイン出てるってやつ? 俺が断ったらどうなるの?」
 呆れ顔で、宇都宮が聞いてくる。
「うーん、多分アテガキっぽいし、宇都宮さんクラスの俳優さん探す方が大変なので、再来年?」
「ってか何、要は俺が空いたらやりますみたいじゃん、それって」
 宇都宮はくすくす笑う。
「まあ、そんな感じ?」
「しょうがないなあ。でも多分結構タイトだからさ、空いてる時に撮影入れるみたいな感じになっちゃうと思うけど、いいのかな?」
「そりゃもう! OKです。宇都宮さんに合わせます!」
 良太は大きく頷いた。
「全く、良太ちゃんに言われたら、俺断れないとかわかってて、坂口さん、ずるいよなあ」
「ええ? いやあ……」
 そんなことを言われると、それこそ良太にも立つ瀬がない。
「でもなんか面白そうですよ? 高尚な文芸作品もいいですけど、アクション娯楽とかって、俺好きかも」
「まあね、他のメンツはまだ決まってないんだろ?」
「ははは、まだこれからです~」
 どうせ、また俺にオハチがまわってきそう。
 とはいえ、宇都宮に快諾してもらったことで、もうプロジェクトは動き出したようなものだ。
 良太は心の中で、よっしゃあ、と叫ぶ。
 これで懸案の一つが片付いた、と思いたい。

 


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