月鏡90

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 まだ報告していなかったことを思い出し、良太がそう告げると、「宇都宮クラスじゃ、来年のスケジュールを今から確保とかほぼ無理に等しいさ」と工藤が言う。
「『田園』の件なんか坂口がわざわざ公演先まで出向いて打診したから何とかなったわけで、正攻法ならまず無理だ」
「はあ、そうですよね、オフもただ休むっていうより充電期間として必要ですもんね。あんんまり今年もオフないみたいですよ、宇都宮さん」
「来年もそんなとこだろう。そこへ無理やりドラマのスケジュールをねじ込むんだから、坂口もお前に打診させたんだろ」
「はあ?」
「宇都宮がお前を気に入ってるからダメモトでお前にとかって、言いやがって」
 俺を気に入ってるから、とかなんだよ、それ。
 またしても工藤の言葉が良太の胸をチクチク突き刺す。
「まあ、坂口が頼み込むくらいな本なら、面白くないわけがないと、宇都宮も長い付き合いでわかってるんだろ」
 それはそうなんだろうけど。
 俺が頼んだからってより、やっぱ坂口がそこまでして宇都宮にオファーしたいという気概が宇都宮を動かしたのだと思うのだが。
「ああ、それと、お前のSPの連中、何も決めずに頼んだだけだったが、報酬を出した方がいいのか、何か他の方法で礼をすればいいのか、聞いておけよ」
 先日、会社内の盗聴機器探しやPC、ネットワーク関連の検査に対しては、加藤にそれなりの金額を渡したのだが。
「はあ。そういえば、みんな一度社長に逢いたいって言ってました」
「俺のスケジュールとあっちの都合に合わせて、日時を決めたらいい」
「わかりました」
 ってか、特に白石さんだよな。
 工藤に逢いたいとかって言ってたの。
 あの人、あのキャラ、ギャップあるよな。
 いや、確かに六日も時間を拘束したわけだし、報酬って当然だよな。
 ってか、初めからただペンダント渡したいだけなら、そう言ってくれれば、彼らの時間を無駄にすることもなかったのにさ。
 まあ、連絡を取るのも躊躇われたとか?
 っても、何で俺を拉致しなきゃなんないんだよっ!
 あの魔女オバサン、やっぱ面白がってるとしか思えない。
 いや、それだけじゃないか、富貴子の話だと、工藤に恋人でも奥さんでもいればその人に渡したってことだろう?

 


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