月鏡91

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 でも、工藤、ちゆきさんが亡くなってから、ちゃんとした相手いなかったから、それをきっと心配してたに違いない。
 孫が可愛いと思わなきゃ、気にかけたりしないよな。
 逢うことがそうそうできないから、余計に工藤のことは気になっていたんだろう。
 だからってなんで俺、なんだよ!
 俺なんか、ただの部下なんだからな!
 工藤と久々顔を合わせて食事をしているのに、と、良太はグチグチと心の中で文句を言いながらも目の前に並んでいた料理は平らげた。 
 不服そうな顔をした良太を、工藤はいつものように前田の店に連れて行った。
 オフィス近くの地下にあるこの店の重いドアを開けると前田がカウンターの中から、いらっしゃいませ、と出迎えた。
 まだ会社を興す前から度々訪れていたこの店は二十年来変わらない、工藤にとって数少ない落ち着ける場所だ。
 工藤がバカルディのグラスを傾ける横で、良太はウォッカソーダをゴクリと飲んだ。
 グダグダ考えてしまう時に強い酒を飲むと悪酔いするだろうことはわかっていたからだ。
 それに、この店が工藤にはメンドクサイ話をしたい場所ではないことも知っていた。
 客は大抵一人か、二人いてもたまにひそひそ言葉をかわす程度で、カップルでいちゃつくような場所でもない。
 良太にとっても居心地のいい場所ではあるが、頭の中は常に何か考えることばかりで、工藤のような境地には程遠い。
 店を出て部屋に戻ると、ネコたちのお世話をし、シャワーを浴びて、ポカリを飲みながら良太が炬燵でうとうとしているのを見計らったように工藤がドアをノックした。
 結局、こうなるんだよな。
 ドアを開ければ良太はもうエロいキスに翻弄されて、ベッドに連行され、あとは少し酔っている工藤は本能に忠実に野生を取り戻してあっさりと身体を繋ぐと、ガシガシと良太の奥を幾度も穿つたびに良太が喘ぐのを愉しんでさえいる。
「やっ……な……んだよっ! オヤジのくせにがっつくなっ!」
 やっとのことで良太ははむかいの詰りを口にする
「二週間近くほっといた埋め合わせだろうが」
「ほざくなっ! 何が埋めあわ……っ……はあ……っん!!」
 喚いている最中にも弱いところを責められて、良太は自分でもわからないおかしな声を上げた。
「黙って、埋めあわされておけ……!」
 二度三度と埋め合わされるうちに、身体がふやけると、どうにでもして、からもっと欲しい、になってしまういつものパターンで、良太は明け方までオヤジを補給されつくした。

 


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