月鏡92

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 数日後、京助を伴った千雪、辻とその仲間たちが青山プロダクションのオフィスを訪れた。
 大柄な面々がソファに六人、窮屈そうに座っている。
 鈴木さんがコーヒーとロールケーキを運んできて、にこにこと「京都ではご活躍でしたわね、お疲れ様です」と皆に配っていく。
 加藤はそんないかつい顔をしているわけではないが、辻、山倉、白石はでかい上にいかつく、山倉や白石は髭もたくわえていたりするので、ごく普通の人間ならあまり近づきたいとは思わない部類の人相だろう。
 やっぱ鈴木さんは只者じゃないね。
 良太は電話をしながら、自分のデスクに戻っていく鈴木さんを見た。
 ようやく電話を終えた良太は、ごつい来客たちに歩み寄り、「今日はお忙しいところご足労頂いてすみません。もうすぐ社長の工藤が戻って参りますので」と型通りの挨拶をした。
「けど、こないだの仕事ってより温泉旅行みたいなもんだったし、そう、ご活躍ってほどの仕事もしてないのに、あんな破格な報酬もらっていいのかって、みんなが」
 加藤が代表して言った。
 あらかじめ千雪を通じて、良太は彼らに報酬を渡した方がいいのかどうか聞いたところ、報酬の方がいいだろうということで、加藤の口座にみんなの分をまとめて振込をしてあった。
「いえ、前回の時、皆さんのご好意で色々助けていただいたのに、お礼もしていなかったので、そのことも加味してということで」
「では有難く、いただきます」
 加藤が言った。
「そういえば、どないする? 例のペンダント、鑑定とかしてもらう?」
 千雪が良太に尋ねた。
「ああ、そうですね、ちょっと待ってください」
 良太はデスクに入れておいたペンダントの箱を持って来て千雪に渡した。
「工藤さんに渡そうとしたんですが、お前がもらったんならとかって、全然取り合わないんで」
「まあ、そらそやろ。魔女は良太にもらってくれて言うたんやろ?」
 箱を受け取りながら、千雪が断言した。
「けど、ひょっとしたら工藤家の大事なものかも知れないのに、俺がもらう理由がないし」
 良太はまた頑固な工藤を思い出して眉を寄せた。
「嫌ですよ、俺は、お家騒動とか、そういうのに巻き込まれるの」
「お家騒動て、工藤家にはもう工藤さんしかいてへんのやろ?」
 千雪がぱかっと箱を開く。

 


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