月の光が静かにそそぐ13

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「わかった。社長、まあた、パーティ嫌いが、俺に押し付けようって魂胆みえみえ」
「小物も込みで上から下まで二、三着用意しておけよ」
 そう言うと、工藤はオフィスを出て行った。
「ったく、あのオヤジときたら、俺の言うことなんかてんで聞いちゃいねぇ」
 良太は工藤の置いていったカードを眺めながら呟く。
 もちろん、良太に対してだけではない、ことあるごとに工藤はこの法人名でのカードを渡すのだが、引き落としされる口座は工藤本人のものだ。
 会社の経費として計上されることはない。
 そういうところが、何に対しても執着がないというか、良太の中では恋愛のベクトルが常にその執着のない男へと向いているだけ、自分に対しても結局のところ執着もないのだろうと考えると、さみしくもなるのである。
 またぞろ胸の奥が重くなりかけるのを慌てて振り払い、良太は画面に向かう。
 クッソ、沢村なんか、結局のところラブラブのくせに!
 八つ当たりしたくもなるわけだ。
「いいわねぇ、今度銀座にオープンするミランドラのパーティでしょ? セレブがいっぱい集まるのよね」
 エクセルに計算式を入力していた鈴木さんが、小首を傾げてほうっとため息をついた。
「セレブったって、タレントとかでしょ。財界人にはそんなお知り合いとかいないし、仕事だし」
「あら、せっかくだから、ちゃんと似合うものを買ってもらえば、あとあと着られるんだし。仕事でもプライベートでも」
「でも、プライベートでそんなミランドラのスーツなんか着る機会なんて……」
「あら、ミランドラのスーツじゃなくても、良太ちゃんが着こなせばいいだけの話でしょ?」

 


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