「お前、何寝ぼけたこと言ってんだよ、仕事だろ? 『パワスポ』の。こういう忙しい人にはまたの時間なんてないの。ちゃっちゃか頼めよ」
握手をしただけでぼおっとしている良太に、いつの間にか戻ってきた沢村がハッパをかける。
「何、随分二人仲いいんやね」
「リトルリーグからのつきあいなんですよ。こいつと俺」
「ライバルだろーが」
良太が沢村を睨みつける。
「お前にしたらな。こいつ、一応T大のエースやってて、六大学まで野球づけで」
「お、すごいな、T大でエース? で、何か、俺に話あったん?」
「あ、実は、『パワスポ』で是非今度、古谷さんのコーナー持っていただけないかと」
沢村のお陰で良太はようやく本題をぶつけることができた。
「なるほど、うん、それはちょっと事務所に帰ってスケジュールと照らし合わせてからじゃないと即答はできないけど」
「もちろんです。もしお時間いただければ、詳しいお話をさせていただきますが」
「わかりました。そしたら、また打ち合わせの日にちとか連絡しますから」
「はい! ありがとうございます!」
ぺこりと頭を下げる良太は、完全にファンの一人と化していた。
「せえけど、工藤さんてやっぱやり手やってほんまですね。こんなとこで二つも仕事決めてしまうやなんて」
古谷が工藤を振り返って笑う。
工藤のほうが若干背が高いが、古谷もさすがにがっしりとした体躯にミランドラのスーツはよく似合っていた。
「二つもって……」
良太は工藤を見る。
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