月の光が静かにそそぐ2

back  next  top  Novels


「文章になってないわよ。ちょっと可愛いしね、市川美由、明るくて元気で。最近仲いいみたいね。良太にしちゃ、上出来な子つかまえたじゃない」
 アスカは言いながら、残りのサンドイッチをぺろりと平らげた。
「だからぁ、彼女と俺は別に何にも………あーーっ、どうしよ、こんなの見たら亜弓のやつまた何か絶対言ってくるし、肇とかも……うう、どうしよ………」
 ぶつぶつと口にしながら仕事も手につかず、良太は一人ただただうろたえる。
 よもや、自分が写真雑誌のターゲットになろうとは、夢にも思わなかった。
 いや、この場合、人気アナウンサーの市川美由がターゲットなのだが。
 二人ともしっかり顔がわかるように撮られている。
 いかにも仲が良さそうに、しかも夜、車から降りたところを狙われたらしい。
 良太がまがりなりにもプロデューサーとして名を連ねているスポーツ情報番組「パワスポ」で時折レポーターをするようになった美由はT大出身で、良太には一応後輩にあたる。
 それがきっかけで話が弾み、おまけに彼女はかなりのスポーツオタクでいろいろとよく知っているし、何より、良太が在学中エースだったという古い事実まで持ち出してきたことで、顔をあわせれば最近二人は野球を中心にスポーツの話で盛り上がっているのだ。
 確かに仲はいい。
 だがそれはあくまでも互いに仕事上でのことだ。
「第一、このいかにもどっか怪しいとこみたいに撮りやがって、これ、MTVの玄関横なんだぞ! パワスポのみんなとメシ食って、俺がたまたま彼女を乗っけてっただけで!」
 拳を握り締めて声を上げる良太を「だからうるさいって、良太」と一瞥し、アスカは続ける。
「会う人会う人にそうやって説明して歩いたら? ヒマあればね」
「うう……そだ……彼女も今すんげく困ってるよな、こんなの撮られて…、どうしよ……」
 アスカのからかいも耳に入らず、良太はただ思いあぐねる。
「市川がその程度のことで良太みたいにおたおたするもんですか。なかなかしたたかよ。新人にまだ毛がはえた程度なのに」
「まあ、この先楽しみだね。頭の回転が速いし、バイリンガルで博学だ。その上明るくて可愛いとくれば、うなぎのぼりの人気も必然かな。写真雑誌のターゲットになるのもいわば勲章みたいなもんだろう」

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ