月の光が静かにそそぐ21

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 何となく話をはぐらかされたようには思ったが、良太は苦笑する。
「社長のお供。仕事がらみだよ」
「そうなんだ。でも、何か見違えちゃった。広瀬さん、すごく似あってる」
「君こそ」
 シックなミランドラのドレスは彼女をいつもと違う知的で大人の女性に見せていた。
「いや、それより、あの、雑誌に変な写真撮られて、ごめん!」
「あ、あれは、こちらこそ、ごめんなさい! うちはほら、スタッフみんな一緒だったって知ってるし、でも、知らない人が見たら、いかにもって感じで撮られてたから、広瀬さんにご迷惑だったでしょう」
 まさしくアスカの言ったとおり、市川には何の動揺も見られない。
「ほんと、写したやつ、今度見つけたら、ただじゃおかないって」
 途端に市川の表情が曇ったのを良太は見逃さなかった。
「ごめんなさい……ほんとに」
 市川はひどく申し訳なさそうにそう言うと、良太の横をすり抜けるように会場内に入っていく。
「え……どうしたんだろ……」
 良太はいきなり変貌した彼女の態度が解せないまま、市川に続いて会場に戻ったのだが、すぐに「良太、帰るぞ」と、工藤がたったか会場を出ていくので、良太は慌てて後を追い、エレベータから地下駐車場に降りていく。
 写真がでっちあげだということはわかっているものの、二人が一緒に会場に戻ってきたのを見て、工藤は我ながらついカッときて、出てきてしまった。
 ミランドラに挨拶もせずに出てきたことを思い出したが、工藤にとってはそんなことは些細なことだ。


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