月の光が静かにそそぐ22

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 そういえば、自分が運転する車に良太を乗せるというのも久しぶりな気がする。
 最近、飲酒運転の目に余る報道が多くなってから、工藤はこういったレセプションでも極力タクシーを使うか、グラスの酒には一切手をつけないようになった。
 良太も、工藤が口をつけていたらと考えて、シャンパングラスも形だけ手に持っていただけだ。
「うわーでも、古谷さんと仕事ができるなんて、夢みたいだ」
 もうちょっと古谷と話したかったなと、あらためて感激が舞い戻り、ナビシートに座った良太は思わず口にした。
 子供のように目を輝かせる良太は可愛いものだが、いい加減、古谷古谷と連呼されると、工藤としてもあまり面白くはない。
 札幌では宇都宮俊治のことをえらく賞讃していたし。
「『パワスポ』のほうもきっちり、約束をとりつけろよ」
「え、そりゃあもう! 何が何でも」
 ぐっと良太は拳を握り締める。
「でも、古谷さんと約束してたんですか? 今日」
「古谷は以前ミランドラのコレクションに請われて出たことがあったから、おそらく今夜も現れるとふんで行ったんだ。でなけりゃ、んなもん、パーティなんぞうっちゃってる」
 しれっと口にする工藤に良太は呆れた顔を向ける。
「ったく、これだからな。にしても俺までミランドラのスーツなんか揃える必要あったんですか? 正味一時間もいなかったのに、三着で何十万も散財して」
 三着目は吊るしの比較的安い方のを選んだのだ。それでも一着二十万近い。
 だが工藤の前に三着並べて見せたところ、即座に却下されたのがそれだった。
「似合って、着られればそれでいいだろ」

 


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