一杯を空にすると、工藤は千鳥足の良太を担いで店を出た。
「こら、しっかり歩け」
「へーい……」
さすがに良太を部屋まで連れて行くのは、つぶれたひとみを抱き上げて運ぶより骨が折れる。
エレベーターで七階にあがると、猫たちが寝ているだろう良太の部屋ではなく、隣の自分の部屋に連れて行く。
「トイレ……」
部屋にあがるなり、のたのたと歩いていく良太に、「おい、大丈夫か」と心配になって工藤は声をかける。
水音がしてトイレのドアが開くと、良太は出てきたのだが、その場でバタンと気を失った。
青白い月の光線がカーテンの隙間から落ちている。
どのくらい時間が経ったのか、夜明けにはまだ遠いようだ。
うとうとしていたらしい。
隣に寝ていた良太が動く気配で工藤は目を覚ました。
床に倒れこんだ良太の服を脱がせて、ベッドまで運んだが、爆睡しているようで、工藤がシャワーを浴びてから横にもぐりこんでもぴくりともしなかった。
疲れもたまっていたのだろう。
古谷古谷と連呼されるのはいただけないが、良太と一緒に仕事をするのは工藤としても悪くない。
あとは、有吉か。
工藤は気になっている男の名前を思い浮かべた。
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