「いや、アスカさんに限っては七三で面白がってるのが大きいに決まってる。っと、んなことに時間取られてる場合じゃないって」
早いとこ片づけてしまいたい書類があったのを思い出して、パソコンの画面に向かったところで、良太の携帯が鳴った。
画面に映し出された名前を見て、良太はちっと舌打する。
「はい」
『よう、色男! なかなかやるじゃん、お前も』
だから出たくなかったのだ。
「くだらないことで電話なんかすんな。お前、オープン戦の途中だろうが」
『だからだろ、ひたすら真面目にゲームやってるだけの味気ない毎日ってとこへ、飛び込んできたこのセンセーショナルなスキャンダル!』
「なーにがセンセーショナルだ、言っとくがあれは……」
このやろ、佐々木さんとなかなか会えないもんだから、俺で憂さ晴らししようって魂胆が丸見えなんだよ!
『そういや、ミユミユとお前、こないだのキャンプ取材の時もいちゃついてたもんな。大学の後輩だって? ミユミユ、ああ見えてT大卒の才媛なんだ』
「誰がいちゃつ……! だから、俺と彼女はそんなんじゃ断じてあるわけないんだっ! あの写真だっていいか、パワスポの打ち合わせの帰り、テレビ局の玄関前で、他のメンバーも周りに……」
『まあまあ、いいじゃん、お前んとこのオヤジにばっか好き勝手させとかずに、お前もやることやってみれば? っと、時間だ、んじゃ、またくるんだろ? 取材、楽しみにしてるぜ』
「ちょ……、こら、沢村っ!」
言いたいことだけ言って切ってしまった相手に怒鳴っても、既に携帯から聞こえているのは無機質な機械音のみだ。
「あんのやろう、勝手なこと言いやがって」
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