月の光が静かにそそぐ7

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 だが、人には恵まれているといえばそうなのかもしれない。
 良太はあらためて思う。
 もし、リトルリーグからの顔見知り、いや、良太にしてみればライバルでもなければ、関西タイガースのナンバーワンスラッガーとこんな砕けた会話ができるとは限らないだろう。
 何せ、良太とは軽口を叩く沢村智弘だが、高校、大学と騒がれすぎたせいで、超マスコミ嫌いはよく知られていて、よほどじゃないと取材に応じてもろくな答えが返ってこない。
 特にキャンプインの頃はまだ調子が低迷していて、そんな時に取材など金輪際ありえない。
 はずが、『パワスポ』の取材で市川とともに沖縄に飛んだ良太が、「何だよ、まだ調子あがらないのかよ」などと声をかけるのに、周りの取材陣は息を呑んだ。
 初めて良太に同行した市川も同じくである。
「っせぇな、俺はいつも尻あがりなんだよ」
 イラつきながらそんな言葉を返したあと、二人してぼそぼそと談笑し始めたのを、マスコミも市川も不思議そうに見ていたものだ。
「あのっ」
 そんな二人に割り込むように声をかけたのは、アスカをしてしたたかと言わせた市川だ。
「あ、悪い、市川さん、ほっといて。沢村、調子悪いとてんで不機嫌でさ」
「すごい、ほんとにお二人、仲いいんですね。始めまして。MTVの市川と申します」
 さすがに沢村も良太と一緒にいる市川に対してはそう邪険にもできず、クールな表情は崩さないまでも淡々とインタビューに答えざるを得なかったのだ。
 どうやら市川の中で良太のランクがぐんとあがったのは、その一件が大きかったようだが。
 沢村は自己評価していた通り、尻上がりに調子を上げて、ここ数日打撃練習でも柵越えを連発し、特大のオープン戦第一号も出たばかりだ。
「だもんだから、あのやろう、調子こいて……」

 


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