月の光が静かにそそぐ9

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 実のところ、秋山から面白い写真が今日発売の写真週刊誌に載ってるからオフィスに寄ってみろ、という電話を起き掛けに受けた工藤も、今度はいったい何の写真を撮られたのかと思って、少し早めにオフィスにやってきたのである。
 しかしまさか、撮られているのが良太とは思わなかった工藤は、それを見て苦笑せざるを得なかった。
「かなりの腕だ。そんじょそこいらのカメラマンのやり口じゃないな。名前も…ない」
 アスカがわざわざ見開きで置いていったに違いないと怒りつつも、良太はわたわたと慌てて工藤の手から雑誌を取り上げようとするのだが、工藤はそんな良太の言葉も聞いてはいない。
 ちぇ、何だよ、ちょっとくらい心配しろよ!
 あまりに平然としている工藤には、内心ちょっとガッカリなところもないではない。
 火のない煙草をくわえたまま雑誌を覗き込む工藤を見上げた良太は、工藤がどうやら疲れているようだと気づく。
 最近は本数を減らし、特にうるさいアスカの前ではほとんど吸わなくなっている工藤が煙草をくわえるのは、疲れているか、面倒な仕事を抱えているときである。
 眉をひそめる工藤の目じりの皺が深いのは、かなり疲れている証拠だ。
「今日くらい休んでたらいいじゃないですか、工藤さん。今日は急ぎで入ってる仕事もないし、俺が代わり行ければ行きますよ」
 雑誌のこともどこへやら、つい、そんな言葉が口をついて出る。
「そりゃ、ありがたいな。『美聖堂』の斎藤さんに、お前もこないだ気に入られてたし、行ってくれるんなら譲ってやってもいいぞ」
 焦りまくった良太の弁解を聞くまでもなく、よく見れば雑誌の写真はテレビ局の前だ。
 相当腕のあるカメラマンが撮ったらしいことはわかるのだが、どうもその写真の雰囲気に工藤は見覚えがあるような気がしてさっきから気になっていた。
「げ……、い、や、あの、ハハ、斎藤さんは、やっぱ、工藤さんじゃないと、俺じゃ相手になんないですって」

 


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