来月中には東洋商事本社でプロジェクトについての最終会議が行われるが、それまでに制作会社との打ち合わせを踏まえ、プラグインや佐々木、Nプロダクションとのオンラインミーティングでプロジェクトのフレームワークに沿った準備をする必要がある。
プロジェクトの打ち合わせの後は、紫紀と工藤は二人でドラマの話になり、宮下と良太、それに広報室の面々とは、ニューヨークでの研修の話になった。
「三か月の予定で、もう借りる部屋は決まっています」
「そうなの? どちらに?」
宮下が聞いた。
「ウエストヴィレッジに」
「あら、じゃあうちにも是非遊びにいらして。アッパーウエストサイドのアパートなのよ。治安もいい方だから住みやすいところよ」
「はい、向こうに落ち着いたら伺わせていただきます」
何が肩が凝りそうって、研修よりもプロジェクトよりも、宮下の家に行くことよりないと良太は心の中では思う。
東洋グループの面々が帰った後、良太が工藤にそれを言うと、例によって鼻で笑われた。
「せいぜい、おばさんのご機嫌を損ねないようにするんだな」
これ見よがしに工藤が言う。
「だから、おばさん、やめてくださいってば!」
二人がオフィスに降りていくと、「あの人たちって、東洋グループの重鎮?」と森村が聞いた。
「まあ、そうだよね。紫紀さんはトップだし、宮下さんは次期ニューヨーク支社長で、岡林さんと中平さんは、東洋グループの広報室の人」
良太が説明した。
「そうだ、森村、お前、来年の三月末から、一、二週間空けとけ。良太と一緒にニューヨーク行ってもらう」
自分のデスクに座りしな工藤が言った。
「え、ほんとですか?! やったあ!」
森村は立ち上がって喜んだ。
「自分の家があるだろうが、とりあえず良太と一緒にウエストヴィレッジのアパートに行ってくれ」
「わかりました!」
嬉々として森村は答える。
「モリーんちって、どこにあるわけ?」
良太は聞いた。
「アッパーウエストサイドのアパートです。父の家だけど」
「そうなんだ、じゃあ、宮下さんちも近いのか」
「俺んち、セキュリティ厳重過ぎて、ダチとか呼べないんです。虹彩登録してある人間で、二重のパスコード通過しないと入れないから」
森村のぼやきを聞いて良太は「ひええ、何、秘密基地みたいじゃん」と驚いた。
「要塞みたいですよ。中は全然普通の家ですけど」
波多野らしいと良太は感心する。
「何、ひょっとして、武器もあったりとか?」
「まあ、それはご想像にお任せします」
良太の質問に、森村ははっきり答えない。
森村はシールズ上がりだし、それもありなんとは、良太も思うのだが。
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