月澄む空に26

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「そう。富田さん、工藤さんの先輩プロデューサーで、工藤さんがバリバリ仕事をこなす頃には、ちょっと落ち目になってたんだよね。で、聞くところによると、当時、富田さん、工藤さんをかなり目の敵にしてたらしい」
 藤堂の話を聞くと、良太は、参ったなと口にした。
「それ、何か、もう決まりって感じしませんか?」
 ひょっとして工藤も気づいていたのでは?
 調べてからとか言ってたのって、その富田ってやつのこと?
 小宮山は局のプロデューサーのキャスティングだから、よほどのことがなければこのままでいいが、もし万が一警察沙汰にでもなったら降ろさざるを得なくなるし、小宮山の撮影分を撮り直しか、或いはカットということにもなりかねない。
「小宮山さん、結構出てるの?」
 藤堂も良太の考えたようなことを気にしたのだろう。
「ちょこちょこですけど。天野さんの先輩刑事ってことで」
「とすると、早いとこ決着つけた方がいいってことだよな。無論、放映前に」
「ですよね」
 良太は大きくため息をついた。
「もうちょい、調べてみるよ。良太ちゃんは、撮影やロケの時、気を付けて」
「ありがとうございます。助っ人も頼んであるんで」
 藤堂の電話を切ると、良太はすぐに加藤を呼び出した。
「トミタエンタープライズ。そこの社長で富田って人が、元MBC時代の工藤の先輩らしいんだけど」
 小宮山だけでなく、富田のことも調べるようにと加藤に頼むと、「わかった。良太はとにかく、下手に動くなよ」と加藤は語気を強めた。
「何だよ、加藤さんまで。どうせ俺が動くと相手に捕まったりするのがおちだと思ってるんだろ」
 切れた携帯に向かって一言文句を言い、「ちぇ、とっとと風呂入って寝よ!」と良太は立ち上がった。
 
  

 二日続いたスタジオでの撮影は、気合を入れて臨んだ良太や森村の意気込みに反して、何ごともなく滞りなく行われた。
「俺、ついついあの人のこと気になって見てたんですけど」
 帰り際、天野が良太にこそっと耳打ちした。
「すみません、天野さんにまでご心配おかけして。俳優さんには演技に集中してもらえるように俺らで気を付けてますから」
 小宮山のことを気にしながらとは思えない、それこそ気合の入った演技で、監督も天野をべた褒めしてご機嫌だったようだが、俳優陣にそんな気を使わせるようではまずいな、と良太はあらためて自分を戒める。
 ひとみもライトの一件以来、非常に気を引き締めて臨んでいるし、下剤で休んでいたスタッフや俳優も戻ってきて逆にスタジオ内はいい意味での緊張感がある。
 加藤と山倉はそのまま仕事を続けることになっており、中一日で今度は吉祥寺でのロケになる。
 実際吉祥寺のカフェや大学構内でのロケのために、二href=”https://www.tsukiyononeko.com/kr/tsukis/tsukis27/”>next  top  Novels

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